日本精神科病院会長 山崎學氏文章 (協会誌巻頭言 会長 山崎 學Japan as No.1日精協雑誌 2012 1月号) に対する、「抗議・撤回および公式謝罪要求文」および「公開質問状」

 

日本精神科病院協会殿

2012年1月31日

全国「精神病」者集団

貴協会誌 2012年1月号に掲載された会長山崎 學氏のJapan as No.1と題された協会誌巻頭言文章(以下「巻頭言文章」)は、その内容に関して、日本国内のみならず、諸外国の事例も含め事実関係の著しく偏った見方が存在するのみならず、その表現に関しても、日本の精神科病院、医療に対して批判を行っている人間や団体に対する、もはや誹謗中傷そのものとしか言いようのない表現、また精神科病床数、平均在院日数(いずれも言うまでもなく日本は世界一である)の削減、短縮、退院促進活動、人権擁護(アドボカシー)活動等に真摯に取り組んでいる当事者団体、関係諸団体に対するまさに侮辱そのものと思われる表記・内容が随所にみられ、到底容認されるべき文章ではない。

さらに、会長の立場で書かれた「巻頭言文章」である以上、日本精神科病院協会(以下「日精協」)としてかかる認識を共有しているものとも十分判断されうるが、仮にそうだとすれば、日精協そのものが、もはや公的な団体として社会的に存続すること自体大きな問題点をもはらみかねないこともここにあわせて指摘しておきたい。

 

「抗議・撤回および公式謝罪要求文」

我々は、「巻頭言文章」に強く抗議するとともに、「巻頭言文章」の即刻全面撤回および公式な場での正式な謝罪をここに強く要求する。

 

「公開質問状」

また、具体的な表記内容等に関して、以下の公開質問を行う。各質問内容等に具体的に即して、2月末日までに回答されたい。
Ⅰ.「35万床の精神科病床数だけが強調され、しかも精神科病院における患者の処遇は、脱施設化前の欧米の精神科病院、つまり大規模入院施設で刑務所もどきの処遇がいまも行われているといった偏見に満ちたものでした。」の部分について

質問1 精神科病院における患者の処遇に関して、外部の人権擁護(アドボカシー)団体等の、立ち入り調査や救援活動を認めている精神科病院は日本の精神科病院全体のごく一部なのではないかとおもうがいかがか。またなぜ日本の多くの精神科病院は処遇に自信があるにもかかわらず、人権擁護(アドボカシー)団体の調査や訪問を拒否し続けているのか詳しくご事情をご説明頂きたい。
質問2 世界一であるといわれる身体拘束・隔離がこの間急激に増大しているといった点やいまだ後を絶たない患者に対する各種人権侵害(医療の名を借りた自由・人権の不当な剥奪、強制治療(様々な観点からの批判が存在するES療法の増加等も含む)やいまだ見られる使役等)、また数多く存在する「劣悪病院」の諸問題等、これらの点は、貴方が主張する「偏見」の問題ではなく、会長や日精協自身がが「正しく現実を認識していない」のではないかと思われるがいかがか。

 

質問3 貴方が日本の精神科病院での処遇に自信があるのならば、今後、当事者団体や人権擁護(アドボカシー)
団体の訪問や調査等またその結果の一般への情報公開等にも日本全国の精神科病院は「無条件」に協力すべきではないか(むろん、プライバシーの尊重の問題等に「正当に配慮」するのは当然とした上である )。
Ⅱ.「この偏見を助長したのは、日本の精神科医療について歪曲化して発言をしている確信犯的原理主義者、外国カブレの学者、精神科病院を非難することで生活の糧を得ているといった人たちです」の部分について

質問1これが日精協会長という公的な立場にある人間が、外部からの批判に対して発すべき言葉なのだろうか?もはや語るべき言葉も持たない。即刻撤回し、謝罪するとともに、「年頭冒頭文章」を書いた山崎學会長はもはや日精協という公的な団体の会長という職務にふさわしくないものとさえ充分に思われるがいかがか。

 

質問2 また「年頭冒頭文章」が日本精神科病院協会全体の見解なのだとすれば、日精協は外部等からの真摯な批判者を誹謗中傷することを協会全体で認めている団体ということになろう。即刻協会そのものを解散し、批判に謙虚に耳を傾け、見識と自己改革能力もった団体として再出発すべきであろうとも思われるがいかがか。

Ⅲ.「欧米の脱施設化は、精神科医療に対する国の財政的困窮の結果といった側面と、イタリアに見られるような政治運動の一環として行われたという両面性を持っています。」の部分について

質問1 欧米やイタリアに関する認識に関して。いわゆるケネディー演説から始まったアメリカの精神医療改革にせよ、イタリアの精神医療改革にせよ「人権運動」だったことは、世界中の多くの関係者が共有している認識ではないのではないか?「脱施設化」に関する上記見解は一面的に偏った認識と思われるがいかがか
Ⅳ.「また、病床削減を行ったアメリカ、イギリス、カナダ、イタリアでは精神科病床を増やす必要に迫られ、精神科病床の増床を始めています。」の部分について

質問1 精神科病床の増床を進めようとしているのは、例えばイタリアでは精神科医の中でも一部のいわゆる「保守派」と言われているグループであると聞いている。アメリカ、イギリス、カナダ等世界全体の動きは当方も充分承知してはいないが、現時点まだごく一部の動きに過ぎないとおもわれる。いずれにせよ35万床という実数でも対人口比でも世界一の精神科病床数の日本での削減に反対する論拠には全くなりえないと思うがいかがか。
Ⅴ「馬鹿のひとつ覚えのように「地域移行」「平均在院日数の短縮」「入院抑制」を推進すれば、過鎮静にして在宅で看るといった欧米型の精神科医療に追い込まれ、患者にとっても家族にとっても好ましい結果にならないのは明らかです。」

質問1「馬鹿のひとつ覚えのように「地域移行」「平均在院日数の短縮」「入院抑制」を推進」とは具体的にどういう意味か。ご説明頂きたい。特に「地域移行」「平均在院日数」「入院抑制」の推進」に日々献身的努力をなされている、各種関係者、当事者団体等にもっとよく理解できるよう、どこがどう「馬鹿の一つ覚え」なのか、より具体的に、当事者、関係者も出席する公的な場所でしっかりと責任を持ってご説明、ご回答願いたい。

Ⅵ 「欧米の失敗の轍を踏まないように、 精神科医療改革は時間をかけて慎重に進めるべきです」

貴方が主張するところの「欧米の失敗」に関する認識に関しては、諸外国の関係者に「巻頭言文章」を発信したうえで、事実関係を確認後、後日再質問させて頂くことにするが、その際は誠意をもったご回答をぜひともお願いいたしたい。

 

質問1「精神科医療改革は時間をかけて慎重に進めるべきです」の部分は具体的にどのくらいの時間をかけて、何処をどう慎重に進めようと考えているのか見解をおきかせ願いたい。

質問2例えば入院30年以上の「超長期社会的入院患者」は、すでに入院治療の必要もないのにもかかわらず、今後も長期間在院しつづけ、おそらく「死亡退院」以外に実質的退院はないようさえに思われるが、この点どうか?「脱施設化」「障害者が地域で暮らす権利」の観点も踏まえたうえで、よりわかりやすく明確な見解をお示しいただきたい。

Ⅶ「また、医療提供のバロメーターである、アクセス、コスト、アウトカムいずれをみても、日本の精神科医療は世界一だと思います」

質問1こういった重要な問題に関して「思います」では良くないのではないか?貴方が医療提供のバロメーターとして挙げている「アクセス」「コスト」「アウトカム」それぞれについて、精神科病院の僻地への偏在の問題(アクセス)や医療法特例の問題(コスト)等踏まえたうえで、また今回特に意味がわかりにくかった「アウトカム」についても、可能な限りのエビデンスに基づいたご説明をお願いしたい。

 

質問2 医療には様々なバロメーターが存在するが、各種バロメーターも検討、国際比較したうえで「日本の精神科医療は世界一」とエビデンスに基づいたうえで主張するべきではないだろうか?十分な科学的データーに基づかず一部のバロメーターだけを取り出し、しかも「コスト」や「アウトカム」だけを取り上げ、医療経済学重要な「コストパフォーマンス」分析さえない著しい「誤解」が生じかねないような主張は日本精神科病院協会として即刻撤回すべきであると思うがいかがか。

 

 

以下協会誌巻頭言        会長 山崎  學 Japan as No.12012/01

http://www.nisseikyo.or.jp/home/about/08kanto/2011/2012_01.html



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