相模原市障害者殺傷事件に対する報道のあり方について

報道機関各位

当会は、1974年に結成した精神障害者個人及び団体で構成される精神障害当事者の全国組織です。

このたび、相模原市で障害者が襲われ19名の方が亡くなったこと、未だ衝撃の中で言葉を失っております。亡くなった方のそれぞれの方の命を思いご冥福をお祈りするとともに、被害に合われた方々の順調な回復をお祈りします。

この間、相模原の事件をめぐっては、容疑者の精神科病院への入院歴があたかも事件を起こした動機・理由と関連があるかのような報道が散見されます。しかし、事件と精神障害とを結びつけるような報道が、精神障害者が危険な存在であるかのような偏見を助長・拡大することを強く危惧します。地域社会で暮らしている精神障害者が攻撃の対象とされて平穏に過ごせなくなるからです。現に精神科通院歴があることをもって研修の登録から外された人や解雇された人がいるため、真に責任のある報道を求めたいです。

さらに、容疑者に対する措置入院の解除、退院後の支援が不十分であったことが問題であったかのような報道もされています。しかし、そもそも容疑者が措置入院の要件である精神障害があったのかどうかが現時点では不明です。とくに、大麻の使用については、入院時ではなく入院後に確認されているため、中毒性精神病による自傷他害の恐れを論じるべきではないし、単に危険思想というだけで措置入院にしたのなら出口ではなく入口の問題こそ検討しなければなりません。

容疑者を精神科病院に閉じこめておけばよかったかのような考えは、精神医療を犯罪防止の道具にする短絡的思考につながっていきます。事件の全容が十分に明らかになっていない段階での報道に対して強い疑念を抱かざるをえません。

私たち精神障害者は、報道機関に対し、緻密に調査された正しい事実に基づいて、精神障害者に対する差別や偏見を助長することのない適正な報道に努めていただくことを強く要望します。

 

2016年7月28日

 

全国「精神病」者集団

加えて、「他害の恐れ」を「他人を傷つけるおそれ」などと誤った表現で言い直したものが散見されますが、他害には侮辱などの行為も含まれるため「傷つけるおそれ」という表現は訂正されるべきです。



コメント