2018年12月2日 心神喪失者等医療観察法廃止全国集会 安倍智子さんのアピール

安倍さんの当日アピールビデオ

福岡市の措置入院退院後「支援」の問題 こころの病の患者会うさぎの会会員

医療観察法廃止集会 2018年12月2日

当日のアピールに若干加筆したもの

安倍智子
こころの病の患者会うさぎの会会員

皆さん、こんにちは。措置入院当事者です。今日は福岡市から来ました。仲間と一緒にうさぎの会という患者会をやっています。病気は統合失調症です。

石塚先生が生き生きとお話しされたので、私の話は退屈に聞こえるかもしれませんが、ちょっと耳を傾けて頂けたら、ありがたいです。

今日は、私が措置入院の退院の後に、支援として受けている、保健師による訪問について、お話しさせてください。

私は、病状が悪化して、今年2月から半年間、福岡市内の精神科病院に措置入院していました。そんなに長い間、閉鎖病棟に閉じ込められるのは初めてのことで、辛かったです。

半年してやっと退院出来ました。退院前に、保健師が面会に来て、退院後、時々家に訪問してもいいかと聞かれたので、私は茶飲み話でもして、世間話でもして、帰って行くのだろうくらいの軽い気持ちで、はいと答えました。

退院してまもなく、女性の保健師二人が、月に一度、自宅にやってくるようになりました。自分が思っていたのとは違って、保健師たちは私の私生活と病状のことを事細かに質問して来ました。私はまだ調子が良くなくて、仕方なく、答えたのですが、もっぱら向こうが質問して、私が答える形で、コミュニケーションでもなんでもなくて、一方的な態度で接して来ました。二人そろって記録のメモを取るので、時間を取られるし、無言で時間が過ぎる場面も何度もあって、ただ疲れただけでした。面談は40分掛かりました。

次の月も、同じように向こうのペースで一方的な質問が続いて、やはり40分経って、やっと帰って行きました。

3回目は、さすがに付き合っていられないと思い、何を質問されるかは分かったので、日常の生活、食事や睡眠、薬を飲んでいるか、病院にどれくらいの頻度で通っているかなどなど、生活と病気のことを紙に書き出して、保健師の分のコピーも作って、前準備をしました。時間が長いので疲れる旨を伝えて、紙を渡しました。それにそって伝えたので、要領よく出来たし、保健師が記録を取る時間も省けたので、短い時間で帰って行きました。

この時ばかりは、ほっとしました。

しかし、先月、4回目の訪問でしたが、同じように書き出した紙をもとに様子を伝えたのですが、終わっても、帰ろうとしません。保健師たちは、視線を宙に泳がせたり、じっと下を向いたりして、手元の書類をバッグにしまおうともせず、無言で椅子に座ったままです。私はお人よしなので、「疲れますので、そろそろ」の一言が言えず、一生懸命、明るい話題を持ち出して、愛想笑いをして、場がなごむように気を付ました。向こうはひとしきり笑いながら聞いて、気が済んだのか、やっと帰ってくれました。

しかし、私は頭が変になりそうでした。自分は何をやっているんだろう。この紙を作るのは大変だったでしょうと、保健師は言いました。その心配をするくらいなら、なぜ報告が終わったら、すぐに帰ってくれないのか。私が、訪問のおかげで助かっているとでも思っているのだろうか、それは間違いだ。人の家にずかずかと上がり込んで、一方的に人のプライバシーを根掘り葉掘り聞きだして、支援というよりは、管理、支配としか、私には映りません。向こうにペースを握られ、心理的にも参るので、隣の部屋でCDで音楽を掛け、少し寒いけど、ベランダの窓を開け放し、いつもは閉めているレースのカーテンも開けて、少しでも自分のペースを作れるようにと工夫したつもりでした。しかし、結局、管理は管理でしかない、支配は支配でしかない。保健師たちが、それを自覚していないほど、ナイーブだとは、私には思えません。分かってやっていることだろうと私は思っています。管理だとか、支配だとか言うと、それは患者の被害妄想だと、うそをついてまで、自分たちの思い通りに制度を作ろうとする人たちがいます。許せないことだと思っています。

私は具合が悪くなったので、保健師に電話をして、いつまでこの訪問が続くのか聞いたら、最低でも半年は訪問すると言います。こういうことは主治医に報告する、それではだめなのかと聞くと、措置入院だったので訪問する、措置の人は皆、そうだと言います。では、そもそも最初に、訪問を断っていたら、どうなっていたのかと聞くと、その場合は、保健所に来てもらうと言います。福岡市ではそうなっているのかと聞くと、そうだと答えました。半年で訪問が終わりになるかどうかは、二人の保健師と、上司で決めるということでした。逃れられないのかと思うと、私は本音が出て、このような支援で助かる人もいるかもしれないが、逆効果になる人もいる、これで薬が増えたらどうなるのか。私が自殺念慮があったことをあなたは心配していたが、そもそも病院に閉じ込められたために自殺念慮がわいたのであって、日本の精神科医療が異常であるということ。そして、退院後支援のことが今、問題になっている、あなたも知っているでしょうと、私はその電話で、強い口調で苦情を言いましたが、向こうは、はいはいと受け流すだけで、体よく無視されました。

自宅に来られるのは負担が大きいので、後は保健所で面談してくれと私が言うと、それは可能だと言います。時間も決まりはなくて、5分でもいいそうです。どの情報も、こちらが聞かなければ、向こうからは一言の説明もなかったことでした。私は、「健康維持のため、面談は最低限の半年で打ち切ってくれるよう要望します」と伝えました。最後に、保健師から、「具合が悪いなか、お電話頂いて、ありがとうございました」と言われました。誰のせいでこうなっているのかと、悔しい思いで電話を切りました。

こうやって追い詰められて行くのか、私は、自ら命を絶った仲間のことが何人も浮かび、涙がこぼれました。

その日の夜、訪問が辛いと、山本真理さんにメールをしたら、断ればいい、強制は出来ないからと言われて、びっくりしました。保健師の説明は、強制としか受け取れない答えでした。福岡市ではそうなっているのかと聞くと、保健師はそうだとはっきり答えました。私が無知なのにつけこまれたとしか思えません。真理さんから、それはとんでもない話なので、電話ではなく、手紙で断るのがいいと教えてもらい、手紙は簡易書留で出すこと、必ず日付と名前を入れること、返事も電話ではなく、手紙でもらうことと、助言をもらいました。私は断る旨の手紙を保健師あてに出しました。そして、そのコピーを福岡市の精神保健福祉センターと福岡市役所の保健福祉局保健予防課あてに送りました。

これでだめだったら、真理さんから助言をもらった通り、強制の根拠を明らにして文書を出すように言って、何かあれば、八尋弁護士や法テラスに相談しようと思っています。

強制出来ないものを実質強制して来るという、理不尽な目に合っている訳ですから、保健師から納得の行く説明をもらえるまで、あきらめずにやって行こうと思っています。

支援とは名ばかりで、向こうは分かってやっていることだと、私は思っていますが、しかし、それでも中には、良心的な人もいて、本人が望まない退院後支援なるものが、当事者を苦しめているのだと気が付いてくれる人たちも、少なからず、いるはずです。そこに望みをつないで、このような話を表に出しました。

福岡市で、行政による不適切な「支援」が行われています。このような状況では、退院しても、また調子を崩して、再入院する人が出ても不思議ではないです。

今回のことは、私一人の問題とは思っていません。私は、担当の保健師に対しても、市の精神保健福祉センターに対しても、不満と怒りを手紙でストレートにぶつけてしまったので、これから何らかの形で話が出来る関係を築くのは、大変難しくなったと感じています。支援者から、行政と敵対するのではなく、味方に付けなければいけないと、助言をもらいました。

このような退院後の支援のあり方は、何とか見直してもらいたいです。

善意で支援の仕事に当たっておられる方も多いかと思いますが、高い人権意識を持って頂かないと、ただ、今の精神保健福祉法を維持する役割を担うだけになってしまったり、間違った強制支援を行ってしまったり、結果的に当事者を苦しめることになりかねません。

私が思ったのは、退院後支援に、当事者が同意したとしても、思っていたのとは違う、こういう支援は断りますと言えば、すぐにやめてくれる。後で、やっぱり必要になったと言えば、再開してくれる。その後、また、もういらなくなったと言えば、いつでもやめてくれる。どうして、そういう形にしてくれないのか。

そして、いくら本人の様子を尋ねるといっても、一方的な態度で、しかも長時間を掛けて、辛いです。まるで尋問を受けているみたいだねと、仲間が言ってくれました。

また、プライベートな情報をたくさん集めて行きますが、何のためなのか、事前に何の説明もないですし、本人の了解も取っていません。そういうところは改めて欲しいです。

そのためにも、私は今、山本真理さん、仲間、支援者や大学の先生、弁護士、そして信頼している市の職員もいるので、相談しながら、自分たちに何が出来るのか、模索を始めたところです。

福岡市は「みんながやさしい、みんなにやさしい ユニバーサル都市・福岡」と宣言しています。多くの皆さんがそうではないかと思いますが、私も地元福岡が好きです。本当の意味で暖かく、住みやすい福岡市になって欲しいという願いがあります。

今日は、このような集会で、仲間や理解者の皆さんにお伝えすることが出来て、本当に良かったです。私からは以上です。本当にありがとうございました。

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