第9回口頭弁論期日
2018年9月19日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷
(予定・準備)
原告:証人の申請書、原告の母親の陳述書の提出
被告:反論書の提出
以下 医療扶助・人権ネットワークによる報告
【医療観察法国賠訴訟とは】
精神遅滞及び広汎性発達障害という診断を受けており、医療観察法に基づく医療の必要性がないのに、鑑定入院(医療観察法に基づく入院を決定する前の精神鑑定のための入院)として58日間にわたり精神科病院に収容された方(原告)が、2017年2月13日、国を被告として、慰謝料等の損害賠償を求めた訴訟です。主に、精神遅滞及び広汎性発達障害の医療の必要性(治療可能性など)と検察官の事件処理の遅れ(事件発生から2年経過してから医療観察法に基づく手続を開始するための審判申立を行った)が問題となっています。
【日時】
第8回口頭弁論期日
2018年7月11日(水)13:10
東京地方裁判所615号法廷
【前回期日の内容】
前回期日において、被告国より、検察官が審判申立をした際に治療可能性の有無に関して考慮した根拠資料、裁判官が鑑定入院命令を行う際に考慮した根拠資料が明らかにされました。これに対して原告側で反論することと今後の立証計画(誰を証人申請するか)が原告側の宿題となっていました。
【提出書面】
原告:平成30年7月4日付原告準備書面(5)(平成30年5月9日付被告準備書面(4)に対する反論)
甲第27号証「新版精神保健福祉法講義第3版」174頁乃至175頁
被告:なし
【期日におけるやり取り】
1 争点整理
裁判所は、被告に対し、職務行為基準説に基づいた原告の主張(今回提出した原告準備書面(5))について、被告の方で次回期日までに反論するよう指示しました。
2 証人申請の予定
原告は、証人として、①審判申立をした検察官、②鑑定入院命令を発した裁判官、③原告の母親を証人申請する予定であることを表明しました。次回期日までに申請書を提出し、次回期日において、証人としての採否が判断される見込みです。
他方、被告は、証人を申請する予定がないことを明らかにしました。
【次回期日】
第9回口頭弁論期日
2018年9月19日(水)10:00
東京地方裁判所615号法廷
(予定・準備)
原告:証人の申請書、原告の母親の陳述書の提出
被告:反論書の提出
【(参考)平成30年7月4日付原告準備書面(5)の概要】
被告国が治療可能性を肯定する根拠として指摘する診断要点書(甲5。検察官の嘱託医に対する質問書。)、精神衛生診断書(甲6。検察庁の嘱託医の診断書。)、及び捜査事項照会回答書(甲24の3。主治医の回答書。)は、次のとおり、いずれも検察官及び裁判官の治療可能性に関する判断の合理性を基礎づけるものではない。
1 診断要点書(甲5)及び精神衛生診断書(甲6)について
① 医師は、検察官の「被疑者が何らかの精神疾患に罹患している疑いも払拭できない」という疑問に対し、中等度精神遅滞の疑い、広汎性発達障害であると明確に診断しており、他の精神疾患の可能性を否定している。
② 医師は、治療可能性に関し、「即時の指導や教育の有効性を否定するものではないが、同種の犯罪の繰り返す可能性は残る。」として、犯行直後の指導の有効性は否定してないものの、診断時点における治療可能性を否定している。
③ 医師は、検察官の「25条通報の要否」に関して「(要)」と回答しており、精神保健福祉法25条(現行24条)に基づく検察官通報の必要性、つまり措置入院の必要性を指摘するにとどまり、医療観察法に基づく審判申立に関しては、そもそも検察官から質問されていないので回答していない。
2 捜査事項照会回答書(甲24の3)について
① 主治医は、病名が「広汎性発達障害、精神遅滞」である旨回答した。つまり、主治医は、原告の病名を明確に特定し、他の精神疾患が存在する可能性を指摘していない。
② 病状の改善等に関する質問に対しては「広汎性発達障害に基づく独特の思考、行動様式は一貫している。置かれる環境や、周囲の対応の仕方により症状が出現する。」と回答した。つまり、主治医は、約7年にわたり月1回のペースで原告を診察し、通院治療に当たってきたが、長期にわたる通院治療をもってしても原告の病状は「一貫している」状態であり、改善されていない旨を回答し、治療可能性を否定している。
【本件に関するお問合せ】
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医療扶助・人権ネットワーク 事務局長弁護士 内田 明
TEL 03-5367-5142 FAX 03-5367-3742