COVID-19(新型肺炎)と 心理社会的障害者(精神障害者)


精神病院や障害者施設への新型肺炎の蔓延が案じられる中、障害者団体からの申し入れ特に私たち精神障害者からの申し入れが必要と思います
まず拘禁の解除、収容施設や精神病院の入所者の削減そして
拘禁下での面会やアクセス制限について、制限解除の必要性をもっと主張していかないと思います

以下国際的精神障害者団体がまとめた『COVID-19と心理社会的障害者』を邦訳しました

地域及び国際的心理社会的障害者組織によるCOVID-19のパンデミックに関しての勧告についての宣言

COVID-19(新型肺炎)心理社会的障害者(精神障害者)

 

Pan African Network of Persons with Psychosocial Disabilities(心理社会的障害者汎アフリカネットワーク)

Redesfera Latinoamericana de la Diversidad Psicosocial(ラテンアメリカ心理社会的多様性ネットワーク)

TCI Asia Pacific (Transforming communities for Inclusion of persons with psychosocial disabilities, Asia Pacific アジアパシフィック心理社会的障害者のためのインクルーシブなコミュニティ変革)

European Network of (Ex-) Users and Survivors of Psychiatry (ENUSP)(ヨーロッパ精神医療ユーザー元ユーザー、サバイバーネットワーク)

Center for the Human Rights of Users and Survivors of Psychiatry (CHRUSP)(精神医療ユーザー サバイバー人権センター)

World Network of Users and Survivors of Psychiatry (WNUSP)(世界精神医療ユーザー サバイバーネットワーク)

 

 2020 326

私たち、世界中の地域および国際心理社会的障害者団体は、コロナウィルス感染症の感染および死亡に対する心理社会的障害者の脆弱性を案じています。 「心理社会的障害を持つ人々」とは、精神医療のユーザーと元ユーザー、精神医療による暴力の被害者そしてサバイバー、狂人、声の聴く人、心理社会的多様性を持つ人々を含む、歴史的に差別され疎外されたグループを指します。

心理社会的障害を持つ人々は、以下にあげることの結果として、コロナウィルスに感染するリスクが高くなる可能性があります。

  • 彼らが精神病棟や施設、社会福祉施設、浮浪者の家、法外の非公式の「シェルター」、留置所、刑務所、矯正施設に置かれ、自由を奪われている場合、自らの意志と好みに従って人混みを避けたり人と距離をとったりすることができない。
  • これらの環境における感染の固有のリスクは、過密で不衛生であることで悪化し、そして虐待が発生しやすい場所であることでも悪化する
  • 平易な言葉による情報の欠如やコミュニケーションサポートの欠如を含む、健康情報へのアクセスの障壁。
  • 貧困、家庭内の資源への不平等なアクセス、ホームレスによる予防衛生対策の実施への障壁。
  • 虐待
  • 社会的支援ネットワークとインクルーシブなコミュニティの欠如。そして
  • 心理社会的障害者、特に女性、子供、高齢者、LGBTQIA +の人々、先住民族、多様な人種、肌の色、世系、カースト、国あるいは民族的出身、さまざまな宗教団体の人々、心理的社会的障害者以外の障害者、さもなければ複数の交差する差別に直面しているその他のグループ、に対する体系的な差別

心理社会的障害を持つ人々はまた、次の原因により、より重篤な症状を発症し、死亡するリスクが高くなる可能性があります。

  • 精神科病棟と精神科施設、社会福祉施設、グループホーム、刑務所の栄養、健康状態、衛生状態が悪いこと
  • 子どもや心理社会的障害を持つ高齢者を含む、栄養不足、放置、施設化、ホームレスによる免疫システムの弱体化
  • 特に心理社会的障害を持つ女性に対する、身体的、心理的、性的暴力および虐待の長期的な結果
  • その保健システムでの差別、侮辱、無視、暴力、そしてトラウマの体験、のために保健システムへのアクセスに消極的であること
  • しばしば人々の意思に反して、または強制的な同意の下で投与される、精神薬によって引き起こされるか悪化する糖尿病や高血圧などの基本的な健康状態、そして
  • ヘルスケアへのアクセスと健康保険の適用範囲の欠如による障壁

国は、国際法の下で、他者と平等に心理社会的障害を持つ人々の人権を尊重し、確保する責任があります。この責任は、COVID-19(新型肺炎)パンデミックなどの国家的および世界的な緊急事態の際に高まります。構造的差別、差別的立法、および地域社会と医療および社会的ケアの両方における排除と暴力の慣行の結果としてパンデミックにおいて増大した脆弱性は、緊急時とその後の両方で考慮に入れられ、是正されなければなりません。

障害者権利条約は、精神保健の状況において非自発的入院と治療を廃止し、そのような体制下で彼らの意志に反して拘束され治療された人々を解放することを国家に要求していることを、私たちは国家に再度指摘します。 差別的な拘禁は決して正当化されず、また意志に反して精神の変容させる治療も決して正当化されないのですから、COVID-19(新型肺炎)のパンデミックの間でもこの義務は停止されません。

国や地方自治体に対し、以下の施策を実行するよう要請します。

制度上の設定

  • 精神科病棟および施設の収容人数を大幅に減らし、非自発的入院停止措置をとる。感染、病気の悪化、死亡のリスクが高いばあい、だれ一人としてそうした場所に意志に反して留められないことを確保する
  • 精神科病棟や施設、社会的ケア施設、グループホームで、感染をさけるための衛生的および予防的な対策を緊急に実施する。この対策には環境の掃除と消毒、空気の入れ替え、定期的な手洗い、そして石鹸、手指消毒剤、トイレットペーパー、ペーパータオルなどの衛生用品が無料で入手できることなどが含まれます。人々は集中配布の場まで衛生用品を入手するために行かなければならない、ということはあってはなりません。職員は衛生と予防対策の全てに従うことを要求されねばなりません。
  • 隔離、拘束、同意のない薬物療法の使用禁止、および精神科病棟や施設でのトイレの使用に関する制限の禁止。こうした行為は、人々の尊厳とインテグリティに反するだけでなく、必然的に不衛生な状態を引き起こし、深刻なストレスと身体的悪化を引き起こし、その結果、免疫力を弱めます。
  • 精神科病棟、施設、グループホームの人々にCOVID-19(新型肺炎)に関する最新情報へのアクセスを提供し、友人や家族と連絡を取り続けることができるようにします。感染を防ぐ方法として、部屋を出たり、外の世界と接触したりすることを禁止されてはなりません。訪問者からの感染を防ぐための予防策が必要ですが、一括して訪問者を禁止するという措置は不釣り合いであり、人々をさらなる虐待や放置にさらす可能性があります。電話やインターネットなど、連絡を取り合う別の手段を無制限に許可する必要があります。
  • 拘置所、刑務所、矯正施設の人口を大幅に削減する。これには、公判前、非暴力の罪で投獄されている者、またはすぐに釈放される予定の人々(他の人と平等に心理社会的障害のある人を含む)の釈放も含まれる。
  • あらゆる場合において、自由を奪われた人々と多人数の収容環境にいる人々は、それぞれに異なる脆弱性があることを考慮して、適切な時期に検査を受けることを確保し、またそのようなすべての環境において適切な衛生的および予防的手段の実行を確保します。施設内で集団感染が発生した場合、感染者は適切な医療施設にうつされ、残りの人は感染環境から移動する必要があります。検疫の結果、人が独居監禁などのより制限された環境に置かれてはなりません。

 

 無差別

  • 心理社会的障害のある人が、COVID-19(新型肺炎)に関連する検査、保健ケア、公開情報に平等にアクセスできるようにする。質の高い医療は、いかなる種類の差別もなく、健康保険の適用範囲に関係なく、感染者に提供されるべきです。心理社会的障害のある人は、中心の病院から、COVID-19(新型肺炎)の保健ケアの水準は低いことが多い、精神科病棟や治療施設に転院させられてはなりません。
  • 公衆衛生に基づく公の制限、および法執行機関と保安員の行動は、心理社会的障害のある人を決して差別してはなりません。 COVID-19(新型肺炎)への対応の一部として精神的強制措置を使用してはなりません。自由を奪われた人々および精神科病棟や精神科施設を含む集団的環境の人々に保護を提供する人権基準およびメカニズムは、引き続き有効とされ、緊急措置の一環として削減されてはなりません。
  • 苦痛を与えたり、健康や免疫システムを危険にさらしたりする精神薬やその他の治療法を強制されてはなりません。国際法で義務付けられているように、強制的な治療命令は解除されなければならず、新しいものは導入されてはなりません。
  • 教育や社会保護プログラムなど、COVID-19(新型肺炎)の発生中にサービスの継続性を確保するために政府が実施する一時的な措置にアクセスする際に、心理社会的障害のある人が差別されないようにする。 

 

 

 コミュニティの支援

  • COVID-19(新型肺炎)の集団感染発生時に、苦痛や通常でない意識状態を経験した人々が、個人の意思や好みを尊重した上で、要望に応じた訪問やオンラインでの心理社会的支援、ピアサポートを含めて、継続的に支援を受けられるようにする。
  • 心理社会的障害者のニーズに対応し、ピアサポートをはじめとする従来の精神保健サービスに代わるものを含め、人々の自主性、選択、尊厳、プライバシーを尊重した地域密着型のサービスを幅広く展開するための取り組みをステップアップさせましょう。
  • COVID-19(新型肺炎)集団発生時には、心理社会的障害者を含め、包括的な方法でコミュニティが互いに支援し合えるように準備し、奨励する。これは、強制的な検疫、自宅監禁、情報の過多により、苦痛の状態が高まる可能性があるため、特に重要である。
  • 検疫により自宅を離れることができない、あるいは汚染の懸念が高まっているこの時期に自宅を離れることが困難な心理社会的障害者に対して、食料や物資の入手支援などの実践的な支援を行う。
  • 自宅軟禁にとりわけ困難を感じるとき、心理社会的障害を持つ人々が、強制的な拘禁中に短期間かつ安全な方法で自宅を離れることができるように柔軟なメカニズムを検討します。
  • COVID-19(新型肺炎)の発生時に自己隔離する必要があるかもしれない心理社会的障害を持つ人々、特に貧しい生活を送っている人、失業中または自営業している人々をサポートするために、追加の財務措置を採用します。
  • メディアにはCOVID-19(新型肺炎)について責任を持って正確に報道するよう奨励し、またソーシャルメディアを読んだり情報を共有したりする際に批判的な思考と判断を奨励します

 脆弱なグループ

  • 家庭内暴力の情報とサービスへのアクセスを提供し、家庭で虐待や暴力を経験している子どもを含む人々をサポートする。年齢を問わず、心理社会的障害を持つ人々は、家庭での検疫や家庭での隔離中に虐待や暴力のリスクが高まるのを経験しがちです。
  • 地域社会に出かけていく訪問活動を実施して、自宅やコミュニティ内で、縛りつけられたり枷をつけられたりすることも含む、自由を奪われたり虐待を受けたりしている心理社会的障害のある人を特定し、救助し、人権を尊重する方法で適切なサポートを提供します。
  • 心理社会的障害を持つ人々を含むホームレスの人々が、差別のない、人権を尊重された方法で、充実した清潔な衛生施設へのアクセスや検査と治療などの、COVID-19(新型肺炎)感染に対する予防策を確実に利用できるようにする。政府は、隔離期間中にホームレスである心理社会的障害を持つ人々が当局によって虐待されないようにし、他者と平等に水、食料、シェルターを提供されるようにしなければなりません。
  • COVID-19(新型肺炎)が薬物使用者に拡散するのを防ぐために、針と注射器配布プログラムやオピオイド補充療法などのハームリダクションサービスの継続的な提供を保障します。

参加

  • COVID-19(新型肺炎)の発生に対する国家の対応に際しては、心理社会的障害のある人そして彼らを代表する組織に相談し、彼らを積極的に参加させる
  • 制度的状況についての独立した監視に障害者とその代表組織を関与させる。

以上

以下からPDFダウンロード(山本眞理訳)
国際的用語としては精神障害者ではなくて心理社会的障害者となっていますので、あえて今回は心理社会的障害という用語を採用しました

地域及び国際的心理社会的障害者組織によるCOVID-19のパンデミックに関しての勧告についての宣言
COVID19(新型肺炎)と心理社会的障害者(精神障害者)

英語原文他各国語バージョンは以下

http://www.chrusp.org/home/covid19

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