ヨーロッパ評議会 議員会議決議 精神保健分野における強制の廃止 人権をベースとした取り組みの必要性 2019年6月26日

ヨーロッパ評議会 議員会議決議

精神保健分野における強制の廃止 人権をベースとした取り組みの必要性

起源 2019年6月26日の会議(23日に開始)の議論による。(14895文書参照―社会問題、健康そして持続的発展委員会の報告書 報告者Ms Reina de Bruijn-Wezeman そして文書番号14910参照 平等と非差別委員会の意見 報告者Ms Sahiba Gafarova)文書は2019年6月26日(23会期)総会で採択 勧告2158(2019)参照

  1.  ヨーロッパ全体で、非自発的収容や医療といった強制的措置を強いられている精神保健上の問題を抱えた人あるいは精神障害者の数は増え続けている。こうした措置への依存を減らすことを目指していわゆる制限を強化した法律を導入してきた国においてさえ、この傾向は同様である。このことはこうした法律を実施しても意図した成果は生み出していないということを示しているようである。
  1.  精神保健分野における非自発的措置の利用が総体として増えていることは、潜在的に自分や他者へ「危険」性があると認識された患者を、強制的に「管理」そして「治療」することに焦点を当て頼っている精神保健の枠組みの文化からおもに生まれている。実に、精神保健上の問題と暴力の関連性についてまた自他への危害を避けるのに強制的措置が有効であるという、ふたつについての経験的な証拠の欠如にもかかわらず、ヨーロッパ評議会の加盟国を通して非自発的措置の正当化において強く焦点化され続けているのは、自他に対する危害の危険性という観念である。こうした強制的措置に依存することは、恣意的な自由の剥奪を導き出すのみならず、障害者に対して異別取り扱いを正当化するものであり、差別禁止への違反行為である。
  1.  一方で、精神保健上の問題を抱えた人に対する社会学的なフィールドワーク調査からえられた証拠は、苦痛、トラウマそして恐怖を含む強制的措置の圧倒的に否定的な体験を示している。患者の意志に反し行われる非自発的な「治療」、強制投薬や強制的電気ショックといったものはとりわけトラウマを与えるものと認識されている。そうした「治療」はまた、健康に対して取り返しのつかない潜在的なダメージをもたらすものとして、重大な倫理上の問題を引き起こしている。
  1. 強制は、精神保健上の問題を抱えた人に対して、尊厳と自律を失う恐れから保健ケアシステムを利用することを避けたり遅れさせたりするという、人をおじけさせる効果をももたらし、命を脅かすような重大な苦痛や危機を含む否定的な健康の悪化を導き、そしてまたそれがさらなる強制を生み出すということになる。この悪循環は断ち切られる必要がある。
  1. ヨーロッパ全体を通して、精神保健体制は、自由なインフォームドコンセントを基礎とした保健ケアの権利を含む、当事者の人権と医学的倫理を尊重した、国連障害者の権利条約と両立しうる、人権を基盤においた取り組みを採用するべく改革されなければならない。
  1. ヨーロッパ各地そしてヨーロッパの外にもたくさんの良い例があり、それらは強制の実践への依存を避けたり減らしたりすることに成功しているという高い評価を証明してきている。それらは病院を基盤とした戦略、地域を基盤とした対応、ピアが主導するする危機あるいはレスパイトサービス、他の実践、例えば事前計画などといったものを含んでいる。これらの有望な実践は精神保健上の問題を抱えた人々を危機的状況においても支えるのに有効であり、それゆえこれらは精神保健体制の中心に置かれるべきである。強制に依存したサービスは、廃止されなければならない受け入れがたい選択肢であると認識されなければならない。
  1. 上記にあげた要素の視点から、そして、更に強い自覚、利害関係者の協調、そして政治的関与は、精神保健政策における強く求められている変革を開始し維持していくために重要であると確信して、議会総会は加盟国に対して、即座に精神保健の枠組みにおいって強制的実践の廃止に向け、変革を開始することを要請する。この目標に向け議会は加盟国に以下を呼びかける

7.1.        最初のステップとして、とりわけ精神保健上の問題を抱えた人とサービス提供者を含む全ての利害関係者の参加をもって、強制的措置への依存をラディカルに減らすロードマップを開発する

7.2.        自殺と自傷について話し合う、安全で支持的な空間をふくむ危機と感情的苦痛を経験している人に対する、有効で利用しやすい支援サービスを開発する

7.3.        非強制的な措置についての研究を開発し資金援助し資源を提供すること。これには地域に根ざした対応、ピア主導の危機あるいはレスパイトサービスそして事前計画といった他のイニシアチブも含む。

7.4.        烙印を押すことなしに、とりわけ子どもや若い人々にたいして、精神的問題を早期に特定し、早期の非強制的な介入と予防に適切な資源を費やすこと

7.5.        精神保健上の問題を抱えている人に対するステレオタイプと戦うことそしてとりわけ暴力と精神保健上の問題を抱えている人に関しての誤った公共の物語と戦うこと、サービス提供者、メディア、警察、法の執行者、そして一般公衆そして同時に精神保健上の問題を実際に体験した人々も含み、全ての関係する利害関係者を巻き込んだ、有効な啓発活動を通して戦うこと

7.6.        高等教育機関のカリキュラムを見直すこと、とりわけ医学部、法律そしてソーシャルワークのカリキュラムにおいて国連障害者権利条約の条項を反映させることを確保するために見直すこと

7.7.        住宅や雇用も含む適切な社会保障へのアクセスを精神保健上の問題を抱える人に確保することで、彼らの排除と戦うこと

7.8.        愛する家族を支援するストレスとプレッシャーに対応できるために精神保健上の問題を抱える人の家族に対しても十分な社会的経済的支援を提供すること

邦訳 山本眞理
原文英語は以下
http://assembly.coe.int/nw/xml/XRef/Xref-XML2HTML-EN.asp?fileid=28038&lang=en&fbclid=IwAR1UL2qRi9x8Ug1y2yxd681c0puJTf9isC2tBdPQgRs_WkwrSQqe_Rox4pQ

訳注

ヨーロッパ精神医療ユーザーサバイバーネットワークは長年の障害者権利条約への取り組みの上でついにヨーロッパ評議会の強制の廃止の決議を勝ち取りました

ヨーロッパ評議会の説明は以下、今後死刑廃止同様に、ヨーロッパ全体で強制の廃絶が基準となり欧州人権裁判所の判断となることは確実である。

今後は死刑問題同様に、強制を維持しむしろ拡大すらしようとしている日本のオブザーバー参加資格が問われることになろう

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E8%A9%95%E8%AD%B0%E4%BC%9A

ウキペディアより引用

欧州評議会(おうしゅうひょうぎかい、英語: Council of Europe、フランス語: Conseil de l’Europe)は、1949年に設立されたヨーロッパの統合に取り組む国際機関。欧州評議会は法定基準、人権、民主主義の発展、法の支配、文化的協力についてとくに重点を置いている。欧州評議会は47の国が加盟しており、それらの国の人口を合計するとおよそ8億人に上る。欧州評議会は、共通の政策、拘束力のある法令、加盟国数が27しかない欧州連合とは異なる組織である。ただし両者は旗など、共通のシンボルを使用している。

欧州評議会の法定上の機関は、加盟国の外相で構成される閣僚委員会、各国議会の議員で構成される議員会議(英語版)、事務局の長である事務総長である。また欧州評議会内で独立した機関として人権委員が設置されており、加盟国における人権への意識と尊重を促進することを使命としている。

欧州評議会においてもっとも知られている組織体は、人権と基本的自由の保護のための条約(欧州人権条約)を適用する欧州人権裁判所と、ヨーロッパでの医薬品の品質水準を定める欧州薬局方委員会である。欧州評議会は基準、憲章、条約を定めることで、ヨーロッパ諸国の間での協力を構築して統合を進めるという機能を果たしてきた。

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