日本に対する重要質問事項への意見 障害者権利条約委員会へ 

2013年拷問等禁止条約 ジュネーブ

日本に対する重要質問事項への意見

精神障害者権利主張センター・絆

2019年7月26日

精神障害者権利主張センター・絆は精神障害者の全国ネットワークであり、2018年5月に全国「精神病」者集団という名称を変え精神障害者権利主張センター・絆となった。

全国「精神病」者集団は1974年に結成され、わたしたちは私たち自身の人権主張を継続してきた。会員は精神障害者のみであり、わたしたちの任務は私たち自身の声でわたしたちの人権主張を行うことである。

全国「精神病」者集団が結成されたとき、わたしたちは、人権団体や労働組合などと一緒に刑法保安処分の導入阻止闘争を始めた。また無実でありながら死刑判決を受けた、赤堀さんの支援も身体障害者団体とともに取り組んだ。赤堀さんは1989年に再審無罪を勝ち取った。

わたしたちは世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク(WNUSP)の会員組織であり、障害者権利条約の作成過程にも国際的にはWNUSPとともに参加した。山本眞理はWNUSPの理事の一人だ。

わたしたちの日常活動は少なくとも年6回のニュースの発行、月1回の交流会、地域におけるそしてまた強制入院における自らの権利主張の支援など。

連絡先

東京都中野区野方4-32-8-202 山田方絆社

メール nrk38816@nifty.com
窓口 山本眞理

 

 

 

日本の状況の概要

施設収容

日本は世界で一番精神病院の病床数が多くそしてたくさんの長期入院患者がいる。歴史的に政府は精神病院の病床数を以下2つの目的のために増やしてきた。

第一に 「危険な精神障害者」から社会を防衛するため
第二に 1960年代の高度経済成長のために、「精神疾患」の患者や他の障害者を介護する家族の重荷をへらし、家族を労働力化すること。

他の先進国が精神病床を減らしている中で、日本政府は1960年代に精神科病床を増やす政策をとった。

1960年に人口1000人あたりの病床数は1、1970年代なかばには2.5となり、2010年には2.7となった。一方OECD諸国の平均は0.7である。

1960年代に政府は私立精神病院の病床を増やすために様々な政策が取った。例えば、補助金であるとか低利の融資、医師と看護の定員基準を他の一般病院よりも低く設定するなどである。そして入院への保険報酬も他の一般病院の約3分の1とされた。

いまや精神病院病床の90%が私立病院にあり、私立精神病院の経営者は精神保健政策に非常に大きな影響を与えている

 

精神科病床は居住系施設として機能している

「OECD医療の質レビュー 日本 スタンダードの引き上げ 評価と提言

2014年11月5日」において日本の精神科病院状況は以下のように描かれている。

「日本では精神科の病床の多くが、長期入院の慢性患者に利用されており、他の OECD 加盟国では精神科病床のカテゴリーで報告されていない可能性があることに注意することが重要である。このような長期入院の病床を除外すると、日本の病床数と平均在院日数はOECD平均と近くなる。それでも、これらの長期入院の病床の多くは、元々は精神科の診断を受けている患者によって占められている。精神障害患者を入院させる歴史的に強い傾向の中、こうした長期入院の精神科病床の患者は、学習障害や知的障害及び認知症の患者とともに、入院していることも考えられる。
こうした患者は他の多くの OECD 加盟国では、『精神科』の長期入院病床や入院施設にさえ入れられていない。」

これは正しい指摘であり、昨年夏毎日新聞は半世紀以上入院している人が少なくとも1770人いるという記事を発表した。

「精神疾患

50年以上の入院1773人 全国調査

毎日新聞2018年8月20日 21時00分(最終更新 8月21日 10時08分)

精神病床のある全国の病院で50年以上入院する精神疾患の患者数が、2017年6月末時点で少なくとも1773人に達することが毎日新聞の調査で判明した。半世紀にわたり継続入院している患者数について公的な統計は取られていない。
厚生労働省は患者の地域移行を掲げ削減を目指すが、今も病院に収容され人生の大半を過ごす人たちが数多くいる実態が明らかになった。
国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)が47都道府県・20政令市を通じ、民間を含め精神病床のある病院から毎年6月末時点の患者に関する情報提供を受けていることから、毎日新聞は各自治体に対し、センターに提出した資料を情報公開請求したほか、担当部署を取材。全国の精神病床を持つ病院の97・7%に相当する1588病院について、1967年6月以前に入院した患者の人数を確認した。
神奈川県は『病院との取り決めに反する』として入院年月を明らかにしておらず、同県内の病院については横浜、川崎、相模原の政令3市所管分に限って把握できたため、人数はさらに増える可能性がある。
長崎県では記録上1923年11月28日に入院した患者もいた。診断が明記されていた1246人のうち統合失調症が約8割を占めた。性別は1433人確認でき、内訳は女性が758人、男性が675人だった。
入院の形態が判明した1291人のうち、自らの意思による『任意入院』は811人。専門医の判断で家族らの同意を得て、本人の同意がなくても病院に入れる『医療保護入院』は476人、自分や他人を傷つける恐れのある患者を知事らの権限で強制入院させる『措置入院』は4人だった。
国立精神・神経医療研究センターは病院の現状を毎年調べており、17年は精神病床のある全国1625病院のうち1610病院から任意で情報提供を受けた。センターによると、入院患者は計28万4172人。入院期間が20年以上の患者については集計しており、2万5932人だった。【畠山哲郎、山崎征克】 」

しかし今に至っても政府はこの人権侵害を解決する有効な措置をなんらとっていない。毎年入院した人の12%が1年経っても入院中であるというのに、さらに政府は新規入院し1年経ったこの人たちの60%は「重度かつ慢性患者」であり精神病院に長期にわたり入院する必要があると主張している。

また安倍首相は誰一人介護離職させてはならないと宣言した。これは地域において適切かつ十分な支援を高齢者に提供するということを意味しない。そうではなく彼らを施設へとりわけ精神病院へ送ることを意味し、そしてまた2025年においてすら精神病院に長期療養する人のための病床としての「需要」が10万床あると宣言した。

したがって、日本においては多くの精神病院病床は居住系施設として機能しており、その一部は終末施設である。

日本では、緊縮政策により社会保障部門も含め、公務員定数は削減に次ぐ削減であり、いくつかの例では東京の自治体職員が生活保護利用者を東京から遥かに離れた精神病院や施設に組織的に送り込んでいる。そして彼らは自動的に長期入院患者となる。

私は「国連恣意的拘禁作業部会(WGAD)の来日調査を実現する委員会」が日本へのWGADの公式訪問を要請した手紙から以下引用する。この委員会はNGOであり、山本も一員であった。

「報徳会宇都宮病院(栃木県)は、1983年に、看護職員らの暴行により患者2名の死亡事件を引き起こした精神科病院です。
現行法上、精神障害者は、自らの意思により精神科病院に入院することができ(任意入院)、その者が病院に対して退院を申し出た場合には、病院は強制入院の手続を採らない限り、その者を退院させなければなりません(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律21条2項)。ところが、宇都宮病院は、精神障害者より退院の申出があっても、退院の申出を放置して、入院を継続していました。
しかも、その多くは閉鎖病棟で処遇されていました。結局、2011年から2015年までの間に、30名以上の精神障害者が自力で退院することができず、法律家の支援を得て退院を実現しました。
宇都宮病院の入院患者の半数は生活保護受給者で、身寄りのない者が多く含まれています。医療費は生活保護費から支払われるため、病院は、安定収入確保のために、医療上の必要性がないのに、精神障害者を長期入院させた疑いがあります。」

今現在でも弁護士は同じような例を東京で確認している。

わたしたちはWGADから、東京の強制入院2つについて恣意的という意見を得ているが、そのうちの一つの被害者Hさんは未だ後見人により精神病院に拘禁されている。そしてこれは決してまれな例ではない。

 

 

質問事項案

12条 法の前の平等

1 なぜ日本は成年後見人制度利用促進法を障害者権利条約批准後に導入したのか

2 日本政府は条約が後見人制度を含むいかなる代行決定システムの廃止を求めていると認識しているか

3 施設と精神病院にいる人の中で後見人制度や代行決定システムのもとにある人は何人いるか

4 後見人制度を含むいかなる代行決定システム廃止に向けた計画と措置について説明してください。また障害者のためのいかなるサービスや支援、これには支援を受けた意思決定システムも含みます、も当事者に拒否権を確保するためにいかなる計画と措置をとるのか説明されたい

日本は2014年に23条4項への解釈宣言を除き解釈宣言も留保もなしに障害者権利条約を批准した。[1]

しかし政府報告書にあるように、政府は後見人制度とまた精神保健福祉法、医療観察法は障害者権利条約と適合していると主張している。

原則として、被後見人または他の後見人制度のもとにある人は後見人の費用を自己負担しなければならない。そしてこれは公的な社会保障と公務員の負担を減らすいい方法である。法律家やソーシャルワーカーにとっては、後見人制度は利益をえらえる大きな市場であり、もし被後見人の家を売り、彼らを施設や精神病院に送れば、彼らは毎月の報酬に加え追加報酬を得られ、そして被後見人を地域において面倒を見る義務を逃れることができる

政府は、後見人制度は人の権利、意志と選好を保証すると主張するが、実際は彼らを施設あるいは精神病院に送ることはよくある。19条の地域に包摂され自立して暮らす権利は多くの後見人制度のもとにある人においては否定されている。

 

13条 司法へのアクセス

障害者の法定への有効なアクセス、とりわけ精神障害者や知的障害者の刑事法定へのアクセスについて日本はどのように確保しているのか

日本では検察官のみが、いかなる司法手続き抜きに、逮捕された人を起訴するか否か決定する権限を持っている。そしてとりわけ微罪で逮捕された障害者は起訴されない例が多い。そしてとりわけ精神障害者や知的障害者は裁判を受ける権利を奪われ、精神保健福祉法により精神病院に送られ、不定期に拘禁されることが多い。

心神喪失者等医療観察法[2]もまた法廷で裁判を受ける権利を奪い、不定期拘禁をもたらす例は多い。

そして障害者とりわけ知的障害者や精神障害者が起訴された場合、法廷での有効なアクセスを確保するための合理的配慮がなく、そのまま死刑判決を受ける場合もある。

 14条 身体の自由と安全

1 日本は障害者権利条約がいかなる強制入院と強制施設収容を禁止していること、そして精神保健福祉法および心神喪失者等医療観察法の廃止を求めていることを認識しているか

2 精神保健福祉法と心神喪失者等医療観察法の廃止に向けいかなる計画と措置をとるのか説明されたい

精神保健福祉法は典型的に2つの強制入院を定めており危険性によるもの(29条)そして医療の必要性と法的無能力によるもの(33条)であり、双方とも要件として精神障害者であることを上げている、したがって精神保健法は障害者権利条約14条違反である。また心神喪失者等医療観察法も精神障害者にのみ適用されるのであり、障害者権利条約違反である。

15条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由

16条 搾取、暴力及び虐待からの自由

17条 個人をそのままの状態で保護すること

1 日本はいかなる強制医療も条約が禁止していることを認識しているか

2 入院、外来患者で強制医療あるいは当事者の自由なインフォームドコンセントなしでの医療をなされているものは心神喪失者等医療観察法の患者に限らず精神保健福祉法のもとでの患者、精神医療の利用者についても何人いるか

3 1996年に強制的不妊手術の条項が優生保護法から削除されて以降、当該の障害者の自由なインフォームドコンセントなしに不妊手術を強いられた人は何人いるか

4 中絶手術や不妊手術も含め当該障害者の自由な同意無しでの医療や強制医療をなくすために日本はいかなる計画と措置をとっているのか説明されたい。

5 身体拘束と隔離を廃止するための計画と措置について説明されたい

精神保健福祉法には医療拒否権の条文はないが同時に強制医療を正当化する条文もまたない。しかし強制医療は日本の精神保健ではよくあることであり、強制入院中の人だけではなく、いわゆる任意入院と言われる人、そして地域で暮らす精神障害者や知的障害者に対してなされている。

精神科医がインフォームドコンセントを精神保健福祉法あるいは心神喪失者等医療観察法下の患者からとっていると主張するとき、これらは自由なインフォームドコンセントではない。障害者にとって、これらのいわゆる「同意」は退院の条件であったり、あるいは生活保護他の社会保障を受ける条件であったりすることがよくある。

かくして精神障害者や知的障害者の多くは抗精神病薬、多剤投薬、そして電気ショックなどの強制医療に屈せざるを得ない

さらに 概要で述べたように、障害者あるいは障害があるとみなされた人々は精神病院に取り残されており、身体拘束や隔離の数はこの10年間増え続けている。

優生保護法は強制的不妊手術の条項があったけれど、1996年にそれらは削除され優生保護法の名称も変わった。

しかし障害者本人の自由な同意のない不妊手術は1996年以降も報告されており、典型的な例は家族が精神病院からの退院の条件として不妊手術を迫るというものだ。片方さんを不妊手術のした医師に紹介した精神科医は、その手紙の中で不妊手術は退院の条件であると書いている。

 

19条 自立した生活及び地域社会への包容

1 2025年に至っても長期療養患者のためのベッドが10万床の「需要」があるのはなぜか

2 なぜ精神病院に入院した人の12%が1年後も入院しているのか

3 1年以上入院している人の6割が「重度かつ慢性」であり、より長い入院が必要なのはなぜか

4 いつそしてどのように、半世紀以上入院させられてきた人たちの地域生活の権利を、確保保障するのか

政府資金による研究班は1年経っても入院している患者の6割は「重度かつ慢性」であり長期入院が必要であると宣言している。そしてこの研究は2025年に至っても長期入院患者用病床に10万床の「需要」があるという政府の宣言を正当化している。

33条 国内における実施及び監視

33条にある国内監視機関として独立した監視機関を日本はいつどのように創設するのですか

日本には国内人権機関が存在しない。したがって国内の人権基準を国際的な視点から監視する組織機構がない。それゆえ国連人権勧告を実現することが非常に難しい。

そしてまた2013年5月に日本政府は国連人権勧告を守る義務はないと宣言した。

しかし日本は、障害者権利条約委員会の「独立した監視枠組みとその委員会の作業への参加ガイドライン」に従った、障害者権利条約33条に基づく独立した監視枠組みを作らなければならない。

[1] 「障害者権利条約23条4項は、出入国管理法にしたがって国外退去を命じられた結果として子供が分離される場合には適用されないと政府は解釈宣言する」

[2] 政府報告書はパラ106において以下のように心神喪失者等医療観察法について説明している。この法律は2005年に施行された。これは日本絵初めての保安処分律法であり、特別病院と地域での強制医療命令を初めて定めたものである。対象者は殺人、放火、強盗、レイプ、強制わいせつをしたものあるいはこれらの未遂そして傷害をしたものであり、起訴されなかったり刑務所に送られなかったりしたものである。

106.「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「心神喪失者等医療観察法」という。)において規定されている精神障害者に対する入院等の処遇は、殺人や放火などの重大な犯罪に当たる行為を行い、かつ、当該行為の当時、心神喪失又は心神耗弱の状態にあったと認定され、不起訴処分又は無罪等の確定裁判を受けた者について、当該行為を行った際の精神障害を改善し、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に行われるものである。処遇の決定に当たっては、対象者の鑑定を実施するとともに、弁護士や保健・福祉に関する専門家等の関与の下で審判期日を開催し、対象者に意見を述べる機会を与えた上で、裁判官と医師である精神保健審判員の合議体において、処遇の要否及び内容を適切に判断することとされている(心神喪失者等医療観察法第 2 条、第 33 条ないし第 42 条)。

2013年拷問等禁止条約ロビーイング

2013年拷問等禁止条約ロビーイング

2014年自由権規約ロビーイング

同じく2014年自由権規約

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