中央官公庁、自治体、裁判所、そして国会における障害者雇用枠改ざん事件に関する抗議声明

中央官公庁、自治体、裁判所、そして国会における障害者雇用枠改ざん事件に関する抗議声明

2018年9月20日

「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会

連絡先

〒154-0021 東京都世田谷区豪徳寺1-32-21 スマイルホーム豪徳寺1F

自立生活センターHANDS世田谷気付

TEL 03-5450-2861/FAX 03-5450-2862/E メール hands@sh.rim.or.jp

私たちは2011年に障がい者制度改革推進会議総合福祉部会がだした、「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言 -新法の制定を目指して-」の完全実現を目指して毎年日比谷野音で大フォーラムを開いている団体です。

今回明らかにされた障害者雇用枠改ざん事件は42年間にも及ぶ慣例として継続されてきたものであり、中央官庁の改ざんによるものは公表された雇用率の約半数あることが明らかになりました。行政にとどまらず、裁判所も、国会も障害者雇用枠改ざんをしていることが暴露されています。

司法、立法、行政三権に深くある、障害者差別と排除の体質が明らかになったのです。

「共生社会」を掲げながら、実は障害者を共に働くものとしてはうけいれない、という許しがたい体質です。障害者を憎悪、嫌悪し排除する司法、立法、行政に抗議するとともに、徹底した調査と自己批判を求めます。

報道によると中央官庁ではこの問題についての第三者委員会を立ち上げるとのことですが、そこには一人も障害者団体の代表や障害者は参加していないとのことです。障害者排除について真摯に取り組もうとするならば、その検討の場から障害者を排除するなどということはありえません。障害者排除をさらに重ねる政府に対して強く抗議しその方針撤回を求めます。同時に「障害者雇用枠水増し」として現在雇用されている癌あるいは糖尿病などの手帳を持っていない方ほかについては、決して「雇用枠以外」という理由で解雇あるいは雇止めなどなされないよう強く要請します。

しかし今回の障害者雇用枠の問題はそもそも障害者雇用促進とは何かという根源的な問いかけをしています。問題点は以下

1 障害者雇用枠において障害者手帳を条件としていること

そもそも障害者雇用枠は障害者手帳を条件としていて、私たちが問題にしている難病等障害者手帳のないものを排除しています。今回明らかになった癌の患者ほか病人を雇用枠に入れたということ、これは制度的には改ざんではあります。しかし手帳を持たない障害者も、本来は障害者基本法2条の定義に基づき「障害及び社会的障壁により日常生活及び社会生活に相応の制限を受ける者」として障害者雇用促進の対象とされるべきであり、雇用枠の拡大は必須であること。

2 そもそも手帳制度の矛盾

骨格提言では手帳制度およびそのもとにある障害種別の福祉法に触れることができなかったが、手帳の認定自体が医学モデル個人モデルによる審査基準によるものであり、手帳制度が必要なのかも含めて根本的な見直しが必要です。

精神障害者に対する障害の認定基準は基本的に働けるか働けないかの基準があり、障害者雇用促進と矛盾しているともいえ、ほかの手帳についても、障害者雇用促進に向けどういう支援があれば働けるのかという発想に基づいたものとは言えません。こうした手帳を基準として雇用枠を定めること自体が問題です。また働けるとされると精神障害者や知的障害者は障害年金を切られてしまうという問題もあり、この矛盾は現在の制度では解決しません。

3 労働現場の荒廃の結果である精神疾患による長期求職者の存在

現在日本は人口比で先進国最低の公務員数となっており、定員削減の影響とみられる長期の精神疾患による休職者が多数生まれています。その数は国家公務員では2016年で3495名(全長期休職者の65%余)、地方公務員でもこの間全体の長期休職者の半数以上が精神疾患によるものと言われています。(注)

今回の雇用枠改ざんにおいても休職中の精神疾患の患者を障害者手帳が取れるであろうと、カウントしたという報告もなされています。また復職の条件として手帳を取り障害者雇用枠でという半ば強制もあると漏れ聞きます。これでは障害者雇用枠自体がむしろ職場の荒廃、パワハラ、長時間労働等を固定化しかねないことになります。

障害者を作り続ける職場で、障害者も含め誰もが共に働ける環境を保障できるとは考えられません。先進国の比較で極端に女性公務員が少ない理由もここにあると見てもいいでしょう。

またこの定員削減の中で官公庁における非正規雇用が増えており、そのこと自体が大問題ですが、障害者雇用枠も非正規雇用でもよいということ自体が今問われるべきです

障害者雇用促進は職場総体の労働条件を見直すことなしには不可能でしょう。

障害者の就労拡大に向け雇用に限らない幅広い議論が必要です。

今回の改ざん事件を踏まえより幅広い議論が求められています。

自営業も含めて様々な労働形態を障害者に保障していく支援体制、また障害者のアドボケイト活動に対する支援体制など、幅広い議論を、障害者団体を含めた独立した委員会を作り継続して議論していく必要があります。1,2、3に上げた矛盾も含め幅広い根本的議論を進めなければなりません。

(注)人事院年次報告及び地方公務員健康状況等の現況より

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