ピアの役割宣言

はじまり

この文書は、2013年ウェスタンマサチューセッツピアネットワークで生まれ、それから、多くの声を反映して成長してきたものです。

私たちの目的 

ピア同士の支援というのは多様な文脈において確立されている。それはがんサバイバーのグループそして遺族のグループから12ステップのグループ更に色々なグループです。私たちの目的は精神保健分野に関連するピアの役割概念を明確化するために、この文書を作り出すというもの。これは実践ガイドそしてピアの役割の活動と価値基準を説明するためのツールです。これは寄せられたたくさんの声によって作り出された。私たちの目標は、これらの概念と価値基準をすべてのピアの役割に統合することをめざし、そして究極的には精神保健体制のすべての側面に浸透させることだ。

ピアの定義

ウェブスター辞書によれば、「ピア」とは相手と平等な立場にいるもの、だ。私たちはそれぞれたくさんの「ピア」グループを持っている。それらは年齢、仕事、趣味そして他の自分のアイデンティティーの多様な側面に基づいている。精神保健体制においては、ピアサポートは、トラウマ、精神科の診断あるいはそして、極端な感情的状態といった生の体験を持っていると自己規定している個人によって提供される。「ピア」という用語は単に特定の経験を持っている誰かということだけを指すのではない。ピア同士の支援は、まず、人が相互的な関係性の中で、いかに繋がりを作るか、そしてお互いに影響を与え合うか、ということである。

ピア同士の役割というのは、生の体験を持ったものが伝統的な役割を担うときに生まれるものとは違う。例えば臨床医や看護師といった伝統的な役割で働いているものでも、彼らのサービスの利用者と同じような体験を持っている場合もある。(例えば看護師がまたがんのサバイバーであるとか)こういうことがあっても、その人は私たちが今議論している意味の「ピア」ではない。彼らは自分たちの個人的体験を話すかもしれないけれど、それでも彼らはまず臨床医や看護師として役割を前提として働く。双方とも意味はあるにはしても、そこではピアとピアでないものの間に実質的な違いが残り続ける。精神保健体制の文脈におけるピアの役割の定義は、価値基準とそれに伴う行動によってもっと明確化されている。

ピア同士の支援には3つの本質的な領域の焦点がある

1 ピアの相互支援
ここにおいて相互性というのは、つながりを作ることが中心となる活動の場で、可能な限り平等に取り組むことそして、誰も「とりまとめ役」になることがないことを意味する。
2 主体の交代
個人的体験から得られた叡智を基盤にしてピアの役割を担うものは成長のために主張し、そして精神保健体制の中でさらにそれをこえて学習することを促進する。
3 体制の「中に」しかし体制「の」にはならない
このことは、精神保健体制の中で働いていても、ピアの役割に特有の価値基準を維持し、その目的を薄める役割にはつかないことを意味する。

私たちの価値基準

私たちの経験は多様だ。精神保健体制から受けた支援を肯定する人もいれば、他方そこでの対応から癒やされる必要があると感じる多くのものもいる。歴史的にいえば、私たちの多くは「クライアント」とか「消費者」というレッテル、あるいは、私たちの「病気」あるいは「壊れた」部分を見る人々だけが決めつける診断名というレッテルを貼られてきた。私たちには通常アセスメントと評価のためのアプローチがなされ、一方で私たち自身の物語や意味付けのやり方を聞こうとして尋ねる人は稀である。自分以外の他の人が専門家であり、「答え」を持ちそして最善とはなにか知っている専門職がいること、そして真理の厳格なバージョンのみがあると私たちは教えられてきた。

さらに加えて、少なくともいくつかの例では、トラウマや他の環境要因により私たちが衝撃を受けたことによる問題であるというのに、そうではなくて、問題は典型的には私たちの脳の故障の結果であるとみなされてきた。私たちの周囲の人々は、責任感からそして責任を問われることへの恐れから決断をくだし、そしてリスクを取ることへ寛容ではなくなり、時に選択肢を完全に削除してしまうといった行動することが非常に多い。私たちは、ほとんどの場合、十全な人生を望むのではなく、低い期待そして維持にのみ焦点を当てるように教え込まれていた。こうした体験(私たち自身の生きた体験でありまた私たちの周囲の者の体験)によって私たちは以下の価値基準を作り上げるようになった。
1. 人間の潜在能力とビジョン
私たちは私たちすべてが治ることができるし治る可能性があることを信じる。私たちはすべての人のための十全で意味ある人生のビジョンに焦点を当てる。
2. 自己決定と選択を最優先にする
私たちは、ひとえに選択することの治癒する力に最高の価値をおき、強制へのいかなる参加も拒否する。
3. 統一した全的な人間としての尊厳
私たちの経験については私たちが専門家である。私たちはお互いを多くの長所と貢献できる力のある全的な人間として認識する。
4. わかり易い言葉
自分の人生と体験について自分で意味を探求し発見する余地をそれぞれの人につくる出すために、私たちは明確で、人間的、そして非臨床的用語に価値を置く
5. 相互性
私たちは立場を交換できる相互性、自分たちのつながりについて正直で現実的であることに専念する。私たちは、お互い学び合うために、人間の体験の流動性、そして私たちの様々な役割を認識する。
6. お互いに心からの知りたい気持ちを持ってアプローチする
私たちはそれぞれの人の世界観を理解することを追求する。私たちは、ファイルや本人のいないミーティングからではなく、本人自身からその人について学ぶことに専念する。
7. 正直、真実そして透明性
私たちは、人の基本的な回復力を信じ、そして人の限界や、心配、そして葛藤について率直に向き合う。私たちは決してその人抜きでその人について共謀して決定しない。
8. 危機としてではなく、成長そして学習の機会として困難への挑戦を捉える
私たちは最大の苦痛の時を、やがてもたらされる変革の潜在的なサインとして、そして成長への機会として認識することを選ぶ。このことは決してその人が経験しているだろう深い苦痛を否定しようとするものではなく、むしろそこから出現しうるものに価値をおき信念を持つということである。
9. 精神保健体制変革と社会変革への必要性を認識する
私たちは変化と持続的そして現実的な回復のためには、私たちの地域と体制を貫いて、変革が必要であると確信している。変化や回復は支援を求めるそれぞれ個人の責任に帰せられるものではない。
10. 前進に焦点を当てる
過去において私たちの多くを傷つけた権力構造やアプローチによりもより良いそして健康な様々なことの開発を追求する。過去の誤りを繰り返したり、私たちの価値基準を妥協したりすることを、私たちは意識的に避ける。
11. 私たちのつながりそして私たちが運動の一部であることを認識する
私たちの仕事は市民権運動の一部である。抑圧の歴史と人権が認識されそして理解されるための闘いの歴史と、基本的に連携していくよう努める。
12. 地域社会を巻き込むことの重要性
私たちは回復には人間的なつながりが重要であることを信じる。ピアの役割を持つものは、要求を満たしそして持続的な変化をもたらすために地域社会の中でそしてそこから資源を発見するために支援することができる

私たちの活動

私たちは、今現在ここで書かれている中身と一致していないピアの役割(この文章で指摘しているような)が存在することを自覚し、そしてこれは今進行している過程にあることを認識する。私たちは、ピアの役割は、自分たちが働いている体制やプログラムの影響をもまた受けていることを認識する。たとえ達成するのには長い道のりがあるとしても、ここで共有した価値基準と行動に向けて働くことに関わるものは誰ひとりとしておきざりにしないことを私たちは望む。私たちの日常実践においてこれらの行動が含まれるように努力すべきことは以下である。

1. 人々が自らの声を発見し活用するように、私たちは積極的に人を支援し主張していく。
2. 私たちは、求められてもいないのにアドバイスせず、私たちの経験と長所と知恵を分かち合う。
3. 私たちがまず責任をもつべきは私たちが支援している人に対してである。
4. 私たちは診断や病理化の用語を使うことを避け、「クライエント」とか「コンシューマー」とかいった体制的な用語を使って人々を呼ぶことはしない。
5. 私たちはただ「共にある」こと(わたしたちはほとんどなにもしていないとほかのひとにはみえるかもしれないけれど)の力を尊重し、柔軟にこうしたやり方で時を過ごす。
6. 孤立した環境で働いている人々に対して手を差し伸べるときも含め、私たちの仕事の中心にピアの役割をおいて人を支援することを、私たちは常に考えに入れる。
7. 私たちは学習と新たな思想に向けた会議、イベント、集会に参加することにより、私たちはお互いに繋がり、そして私たちの仕事を連携し続ける。私たちはこれを重要な責任と認識する。
8. 私たちは、壊れ物扱いするのではなく、しかしお互いに(そして私たち自身も)思いやりをもってもてなす。葛藤の中で働くことも厭わず、正直で、透明性を確保することを通して、私たちはこのこと表現していく。
9. 私たちは、体制の中において変革の主体として、新たな思想を分かち合い、現状に挑戦しそして他の人たちが私たちの活動に参加するよう呼びかけ、行動する。
10. 私たち自身と私たちの周囲にあるもの双方が、実践のあり方と信念の形成がいかになされたかについて理解し十分に意識することができるように、質問と「なぜ」と尋ねることができる文化を支持する。
11. 私たちの役割における私たちの権力と特権について常に意識し透明であることそして今進行中の事態の中で常に検証することに、私たちは専心する。
12. 私たちは、さらなる力の不均衡の危険をもたらす以下の活動に参加することは我々の価値基準と矛盾すると考える。それには以下が含まれる(これらだけに限るわけではないが)

  • 服薬管理に参加する
  • 生活保護などの受取を代行する役割を担うこと
  • 日常的に個人的会話でもチームの会議でも本人のいないところで本人について話すこと
  • 日常的記録に参加すること(例えば個人の進歩の記録など)
  • 人々についての記録を読んだり作ったりすること
  • 評価、診断、あるいは治療計画を書くまたは他の体制の書類を書くこと
  • 強制にむけて共謀することになる行動

13. 私たちはまた私たちの環境についても意識して、それがいかに相互的なつながりを作り出す私たちの能力に悪影響を与えるかについて意識する。私たちは自分たちではコントロールできない環境要因について意見をいう。(例えば「職員以外立ち入り禁止」の貼り紙、施設風の家具などなど)、可能な場合は以下を避ける

  • 名札やバッジを付ける
  • 机を挟んで話し合う
  • 絶対に必要というのでなければ、個人のみあるいは職員のみといった立入禁止の場所を持たない
  • 鍵の束を見せつけるように持ち歩かない(とりわけ鍵のかかったドアがたくさんある場合)
参加を呼びかける

私たちに先行するすべての市民権運動の精神において私たちは運動の一部である。私たちはサービス提供者の役割で働いている皆さんの参加を呼びかける。ここにある価値基準と行動の多くは、「ピア」の役割にだけ特定されるべきものではない。私たちは、すべての組織に、この作業が現実的なされるべき場所を確保するよう呼びかける。変革は一夜では起きない。そして緊張は当然にありうるし進歩へ向かう肯定的サインである。最終的には、真の回復の体制は私たちすべてをお互いにより謙虚に人間的にするだろう

署名

ウエスターンマスピアネットワーク
The Western Mass Peer Network

2019年4月16日 山本眞理訳
英語原文は
以下からダウンロード
ver.2Declaration of Peer Roles 2014

参考文献たくさんのっているサイトは以下 英文
http://www.psresources.info/

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