日本精神神経学会に訴えます 優生保護法下における強制不妊手術への検証作業について
学会は優生保護法の被害者・被害者家族・そして今現在優生思想のもとで差別的に不妊手術,中絶を強要され続けて、性と生殖の権利を侵害されつづけている精神障害者の声を聞け
2019年4月15日
精神障害者権利主張センター・絆
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新聞報道によると日本精神神経学会は6月の総会において専門家を呼びシンポジウムを開き、旧優生保護法の被害実態ほかについて検証を始めるとのことです。
私たちはほぼ同内容の文章を日本精神衛生会にも出しましたが、日本精神神経学会に改めて申し入れいたします
問題は過去のことではありません。この法律だけが問題なのでもありません。優生保護法のあった時代でも、余裕のある方たちは何も恥を晒して審査会にかけなくとも、ということで、自費で不妊手術をしていたことでしょう。そしてそれは多くの場合障害者差別に基づき障害者に実質強制されていたことでしょう。もちろん妊娠中絶もまた。
優生条項は削除されましたが、障害者は生んではいけない、生まれてきてはいけないという思想はさらに強化され、自己決定の名のもとに出生前診断による中絶、そして精神病院入院中の片方さんに対する実質強制である不妊手術に象徴されるような圧力は非常に根深いものがあります。
精神医療の現場では妊娠中の医療について保障できない精神科医が、中絶しないなら診察拒否などということがまかり通っています。結婚の条件として不妊手術を強制される事例は未だ数多くあります。また向精神薬による勃起不全あるいは無月経他による、いわば薬物による不妊という実態もあまたあります。これらについては不問にされ何ら問題になっておりません。
さらに日本精神神経学会はじめ関係13学会は今年5月精神科の研究にもっと金をということで「我が国において、統合失調症による経済損失は毎年 2 兆 8 千億円うつ病は毎年 2 兆円」としています。65年前の日精協の文章、そして1960年代の精神障害者を経済阻害要因と決めつけ精神病院に追い込んだ時代の主張とどこが違うのでしょう。
わたしたち精神障害者は生産性がないどころか生産阻害要因とされています。
ひたすら医療のもとでの治療に専念しろという主張です。国際的にも10月はじめに同じ論理で精神保健にもっと金をというはじめての閣僚級サミットがロンドンで開かれました。これに対してはイギリスの精神障害者団体の呼びかけで国際的にすべての精神障害者団体が反対と批判の声明を出しています。(添付資料参照)(邦訳はこちら)
長年国際的に世界の重荷である精神疾患というキャンペーンが繰り広げられています。国連健康の権利特別報告者は世界の重荷なっているのは精神疾患そのものではない、むしろ生物学的精神医学こそが世界の重荷を作っている大きなバリアの一つとしているにもかかわらず。(添付資料参照)
問題の一端を述べましたが、まだまだ課題はたくさんあります。例えば精神障害者の妊娠出産育児に対する支援のあり方、あるいは障害児の育児そして成長過程における支援のあり方、もっぱら家族に依存している精神障害者の地域生活から自立生活への支援のあり方などなど。
日本精神神経学会に対し、私たちは徹底した検証のために外部の第三者機関を立ち上げると共に、被害者、被害者家族、そして精神障害者の声を聴くことを求めます。
なお6月に開かれるシンポジウムの発言者が公開されましたが、なんと旧優生保護法に対して訴訟している原告は一人も招かれておりません。とりわけ札幌の精神病院で不妊手術を強制された小島さんも呼ばれていませんし、優生保護法の優生条項廃止後に花巻病院で実質的に不妊手術を強制された片方さんも呼ばれていません。いったいなんのための誰のための検証なのでしょうか。
学会総会の入場についての要請
さらに先の名古屋学会では、なんと主催者は私の介助者からすら参加費を取り立てようとしました。学会は民間団体で合理的配慮は努力義務とはいえ、精神障害者の参加に必要である介助者からすら参加費を取るというのは合理的配慮義務違反であり、いやしくも日本精神神経学会のなすべきことではありません。もちろん精神障害者・知的障害者の介助は家族が専ら行うべき、あるいは介助は不要というお考えであれば別ですが。6月の学会では障害者の参加も多く見込まれるのですから、介助者、通訳者などの参加費取り立てを行わないよう強く申し入れます。