2021年6月1日、厚生労働省交渉のまとめ 骨格提言の完全実現を求める大フォーラム

6月1日、厚生労働省交渉のまとめ

骨格提言の完全実現を求める大フォーラム

●データ班がまともなデータをもっていない驚き

(1)で、高齢者施設、しょうがいしゃ関係施設、精神科病院でのクラスター、感染者数、死亡者数を、私たちは聞いています。

この質問に答えたのが、大臣官房人事課で、担当者は、コロナ対策室疫学データ班だそうです。しかし、答えたのは、高齢者施設でのクラスター発生数1636件、しょうがいしゃ施設177件、医療機関でのクラスター発生数1212件、ということだけです。この数字は、昨年2月から直近の月曜日までの数字とのことなので、5月31日までのデータということです。

精神科病院というくくりでは、調べていないとのことで、医療機関については、ベッド数19床以下の診療所とベッド数20床以上の病院を区別しているだけなのです。

しかも、診療所と病院のそれぞれの内訳は、示すことができないのです。「分けて調べているのに、数字を出せないんですか」との質問に対しても、出せないと言います。後で集計して、それぞれの数字を出すことは可能だと言うので、木村事務所のほうに伝えるように言いました。担当者は「判りました」と、答えました。

そして、これらの施設の中での感染者数や死亡者数は、把握していないと言うのです。

極めつけで驚いたのは、こうしたデータを報道されたものから集めた、と言うのです。「報道ベース」との表現でしたが。全員驚くしかなく、「対策を立てることが、これではできないではないか」と抗議したのですが、厚労省は、「対策を立てるためにデータをあつめています」とまじめに答えているのです。

障害保健福祉部精神・障害保健課 精神医療係長も、交渉に出席しましたが、感染者数などは把握しておらず、「コロナ対策本部で把握しているとの認識」などと答えていました。それぞれの無責任ぶりが極まっています。

さらに大フォーラム側から、施設や精神科病院のような人が集められている所の危険性の認識を問われたところで、健康局結核感染症課 主査がコロナ対策本部戦略班として回答に乗り出してきました。

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●HER-SYSについて

この健康局結核感染症課との話の中に、HER-SYSという言葉が出てきました。私もうろ覚えの知識で、話してしまったのですが、その後に調べたことも含めて記します。

これは、厚生労働省、都道府県や自治体、保健所、医療機関、感染して隔離状態に入った人それぞれを結ぶ、ネット上のシステムです。自治体や、保健所、医療機関などは、コンピュータでの操作を前提としていますが、隔離された個人は、自分の状況をスマホなどで記入することができるようになっています。

自治体や保健所、医療機関向けの事務連絡を読むと、感染した人のいる場所、その人が転院など移った場合にはその場所、死亡や回復などの転機などを書き込むようになっています。

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が昨年5月29日に出した事務連絡では、「今後、厚生労働省においては、全国又は都道府県等ごとの統計情報については、HER-SYSに入力された情報に基づいて集計等を行ったものを公表し使用することとする。」と記載しています。

そうすると、「報道ベース」というデータ班の集計とは、何をやっているのか、ということになります。

また、HER-SYSのデータは、医療機関などがきちんとデータ入力をしないと、データとしては反映されないこともあるのかもしれません。ですから、厚労省が100%状況を反映しているかどうかはわからない、と言っているわけです。日本の場合、このようなシステムに書き込む専門の人がいない、ということは、報じられてもいます。

しかしそれにしても、このHER-SYSに記入されたデータから、高齢者施設やしょうがいしゃ施設、精神科病院での感染者や志望者のデータは、当然のことながら書き込まれているはずなのです。要は、それを集計して統計的データとして整理していないだけなのです。少なくとも、ここに反映されているデータだけでも取りまとめて、感染と医療体制の問題を検討する、ということぐらい、最低やっていないとおかしいのですが。

報道されたものと比較すれば、HER-SYSに記入された状況との比較もできるでしょう。

「報道ベース」をきちんと調べたら、もっと詳細なデータを作ることだってできるはずです。PCR検査を徹底的にやらず、変異株検査も多くても40%程度しかやらず、医療の実態もつかまない、この国の行政システムは、根本から腐り果てているような気がするのですが。

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●戦略班の話

新型コロナウイルス感染は、感染症法により、行政への届け出の義務があり、保健所は、「積極的医科学調査」として、感染した状況を調査することが、やはり法令上規定されている、と述べました。

また、どこで感染したかも調べて、HER-SYSに記入され、厚生労働省のホームページにも掲載されている、とのことです。

その上で、厚労省としても、集団の場が感染の危険性をもっていることは認識していて、共同生活が行われるような場所の感染対策をしっかり行うよう、述べている、と言います。

戦略班が感染症法を所管している、ということまでは、戦略班は認めるのですが、HER-SYSに記載されたデータがどうなっているのか、データ班の「報道ベース」のデータとの関係はどうなっているのか、などの質問には、沈黙してしまいました。そこに、データ班が「そこは、内部で確認させていただきます」と口を出しました。

戦略班は、保健所の負担も考慮して、調べる項目を作っている、とのことでした。

そして、何を保健所から報告してもらうかについては、通知を更新して、入力項目を伝えていることを述べました。

こちらから、保健所や医療機関の現場が大変な状況になっており、現場の体制を強化しないと、どうにもならない状況になっている、との指摘に対しては、まったく沈黙しか返ってきませんでした。

●集団生活の場が危険なら、そういう所に、高齢者やしょうがいしゃを入れるべきではないのでは、との質問に対して

老健局老人保健課主査は、「クラスターの起こっている施設では、事業者の判断として、新規の入所者を入れないことがあるとは聞いている」とのことでした。まあ、当然であり、何か政策的な話ではありません。

老健局老人保健課主査が障害福祉のほうの発言を促したので、精神保健課が発言しました。公的に、入院の制限はおこなっていない、とのことでした。

障害保健福祉部障害福祉課 企画法令係員は、しょうがいしゃ施設については、感染防止のためのマニュアルを示し、感染症対策のための費用については、報酬に割り増しをしており、感染が発生した施設についても報酬に上乗せをしている、とのことでした。また、感染が拡大している地域については、医療機関、高齢者施設、しょうがいしゃ施設も含めて、検査の実施を、都道府県に要請している、とのことです。

また、5月31日に、施設内療養を行うしょうがいしゃ支援施設等に対して、感染対策の徹底だったり、療養の質、体制の確保などを行うことができるように、施設における感染防止対策および施設内療養児の支援策等を取りまとめたものを、事務連絡として発出した、とのことです。

こちらが聞いているのは、施設内で感染して、重症化した場合に、救命治療ができる医療機関に送られていない問題をどうするか、ということなのですが、厚労省は、しょうがい特性に配慮した医療機関を確保するように、都道府県・市町村に事務連絡を出している、ということ、実際の病床の確保については、コロナ本部のほうから回答してもらわないと、とのことでした。

精神保健課の精神医療係長 片桐氏からは、昨年6月に通知を出して、あらかじめ転院できる連携医療機関の確保・調整を行ってもらうよう、都道府県に伝えているとのことでした。そして、院内感染にそなえた導線の確保、ゾーニング、消毒などについて示しており、また、事例集を作って、ホームページに公開している、とのことでした。

この事例集の正式名称は、「精神科医療現場における新型コロナウイルス感染症対策事例集 第1版」というもので、各地での取り組みを紹介していますが、実際にクラスターが起こった所としては、愛媛県の牧病院の事例を紹介しているだけのものです。厚生労働科学研究としてまとめられたものを紹介しているわけです。転院ができなかった事例を含めた話や統計的なデータは紹介されていません。

また、ワクチンの優先接種の対象となる基礎疾患に、「重い精神疾患」を加えた、とのことです。

また、「厚労省では、入院医療中心というところから、地域生活中心への推進のために、令和3年度から5年度までの第6期障害福祉計画におきまして、地域生活連携整備体制整備を評価する指標といたしまして、精神障害者の精神病床から退院後1年以内の生活平均日数の平均316日以上にすることを目指している」との趣旨の発言もありました。地域生活基盤の整備を進めて行きたい、とのことでした。

老健局の老人保健課主査は、高齢者施設での対策は、障害福祉関係のものと同様の対策を行っているとのことでした。そして、「我々も、コロナウイルス感染した高齢者については、入院するのが原則であると考えています。なるべく病床が空くように、コロナが治った後の方を、積極的に受け入れていただけるように、そのような施設に介護報酬を上乗せすることを行っている」との趣旨の発言がありました。

大フォーラム側から、コロナウイルス感染症状回復の後のリハビリテーションについて、精神科病院での呼吸リハビリは困難との指摘があり、精神保健課からは、そのような事例は把握していない、との答えでした。

またこちらから転院先の確保の実績を把握しているか、日本精神科病院協会の調査では、6割以上が転院を拒否されたとの調査があるが、と質問しました。厚労省は、日精協の調査については、報道で知っているが、転院の実績については、把握していない、との答えでした。

こちらから、転院の実績は誰が把握することになるのか、との問いを発し、医政局医事課企画法令係 水島武大氏がコロナ対策本部医療班として、発言しました。コロナ感染患者については、都道府県の入院調整本部で一元的に調整を行っていて、患者さんが入院前にどこにいたかなどについては、都道府県の入院調整本部で把握していただいているが、個別に厚生労働省に報告いただくことについては、自治体の負担もかんがみて、おこなっていない、とのことでした。しかし、本来ならば、HER-SYSに書き込むべきことであって、厚労省が関心をもって拾い上げようとすれば、できることではないか、と思います。

大フォーラム側から、民間の個人の調査として、大阪の精神科病院の状況を調べたデータで、一般の感染者数の比率(日本の人口に対する感染者数)と比べて、精神科病院での感染者の割合(精神科病院の入院者数に占める感染者数)が5.7倍。死亡者数の割合に至っては、28.4倍という数字が示されました。そして、このような状況を調べることさえしていない精神保健課への怒りが表明されました。

医療班の水島氏は、入院の実態や患者の状況をつかまないと政策に反映できないことを認めつつ、「今のご意見も踏まえて、必要なデータを検討して行きたい」との趣旨の発言でした。

精神保健課は、上述の事例集を説明しただけでした。この時点で、私たちはこの事例集については知らなかったので、検索するための題名を確認したりなどしました。

こちら側から、障害福祉のほうでは、施設などの状況をどのように把握しているのか、との質問を行いました。これに対して、障害福祉課が答えます。施設に対する都道府県の支援体制や医療体制の整備というところで、都道府県にアンケートを実施していて、各都道府県でどれだけ体制がつくられてきているのかということについて、ホームページでも示している、との趣旨の発言がありました。しかし、最新の状況についてのホームページ上のデータが昨年の9月30日だ、とも言っていました。

厚労省のホームページの中で、障害福祉について取りまとめた項目があり、その中に、新型コロナウイルス感染について取りまとめた部分がある、とのことでした。

●高齢者施設、精神科病院、療養病床の利用者・患者を、救命治療に回さない自治体の通知について

質問状では、神奈川県や東京都八王子市の通知を記し、発言として、感染した方のご家族に保健所の担当者が「延命治療をするかどうか」との趣旨を尋ねてきた世田谷区の例、などを示し、厚労省側の認識を問いました。

厚労省側は、答えを用意して参加していると思っていたのですが、なかなか答える人が出てきません。コロナ本部戦略班、「私が答えるのが良いのかどうか」と言いながら、次のような発言をしました。コロナ本部では、こちらの示した通知は把握しておらず、「原則を申し上げさせていただきますと、コロナの要請者に関しては、感染症法の法令上で、65歳以上であったり、呼吸器系の疾患をもっていたり、そのような基礎疾患をもっている方などは、入院措置を行うというのが定められています。その上で、地域の病床のひっ迫状況、その患者の症状をみて、宿泊療養や自宅療養で問題ないと判断した場合にはこれを認めています。」とのことです。 

したがって、神奈川県や八王子市のような通知を出すことにつながる厚労省側の通知はない、とのことです。とすると、厚労省として、実際に通知を出している自治体に対して、何らかの働きかけが必要になるのではないか、と問いました。

戦略班は、先ほどの感染症法令での規定について、「絶対に入院させなければならない、というものではない。宿泊料用、自宅療養を認めているので、完全な法令違反とはならないが、自治体側がどのような趣旨で、このような通知を出したのかは聞けてはいないのですが、病状などで困ることがあれば、国として支援することがあれば、自治体とコミュニケーションを取って行きたい」との趣旨の発言がありました。

こちらから、実際に通知を出している自治体に、厚労省として何らかの意見を言わないといけないのでは、との問いに、上述の戦略班は、事務所で打ち合わせたようで、次のように回答しました。

医療体制については、都道府県の自治事務であり、厚労省から何かしろとは言えない。ただ、医療政策を所管する省庁として、都道府県から聞き取りをさせていただいて、適切な支援やサポートをさせていただくと言うのは可能です」との趣旨の発言がありました。

では、神奈川県、川崎市、八王子市について、聞き取りをしてもらえるか、との問いに対しては、事務所内で打ち合わせをした上で、次のように答えました。「聞き取りも含めて、必要なことを検討させていただきたいと思いますが、個別の自治体とのやり取りについては、自治体負担に感じないように、必ず直近にやれるとはお約束できないのですが、対応させていただきたいと思います」との発言でした。そして、「ご照会いただければ、どのような状況だったのか、ということについては、回答させていただくことは可能です」とのことです。

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●高齢者や基礎疾患のある人は、入院措置が原則という法令の規定について

 6月11日になって、この入院原則を定めた法令上の規定について、上述したコロナ戦略班の上野氏に聞いてみました。すると、‘感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則’の第二十三条の六の規定であることを教えてくれました。この規定を、以下に引用します。

 「(入院の措置等の対象となる新型インフルエンザ等感染症の患者)

第二十三条の六 法第二十六条第二項において読み替えて準用する第十九条第一項に規定する厚生労働省令で定める者は、新型コロナウイルス感染症の患者であって、次に掲げるものとする。

一 六十五歳以上の者

二 呼吸器疾患を有する者

三 前号に掲げる者のほか、腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患、糖尿病、高血圧症、肥満その他の事由により臓器等の機能が低下しているおそれがあると認められる者

四 臓器の移植、免疫抑制剤、抗がん剤等の使用その他の事由により免疫の機能が低下しているおそれがあると認められる者

五 妊婦

六 現に当該感染症の症状を呈する者であって、当該症状が重度又は中等度であるもの

七 前号に掲げる者のほか、当該感染症の症状等を総合的に勘案して医師が入院させる必要があると認める者

八 前各号に掲げる者のほか、都道府県知事が当該感染症のまん延を防止するため入院させる必要があると認める者」

 感染症法の第十九条の1項とか、やはり感染症法の第二十六条の第2項というのは、都道府県知事による入院措置について決めているものです。感染症法は、準用規定が多くて、かなり読みにくいなあと思いました。

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「延命治療を望む」などと言ったら、救急車で運んでくれないなどというときに、「それはおかしいだろう」と抗議して良いかどうか、厚労省の見解を問いただす意見があり、これに対して、厚労省は、「日本には、医師の応召義務があり、医者に断られることなく、診療を受けることができます。その上で、コロナ感染の入院については、その地域の病床の状況やその患者さんの病状などによって、必ず入院できるかというと状況によるので難しいところはありますが、引き続き入院に漏れたなど困った人が出ないようにサポートさせていただきたいと思います」とのことでした。

●DNARについて

まず、厚労省がDNARについて、どのような解釈を行っているのか、質問していますが、なかなか答えがかえってきませんでした。 

医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室救急医療専門官が、医政局の計画課に連絡をしてみることとなった。質問に答える人は、医政局地域医療計画課在宅医療推進室在宅医療専門官です。

DNARについての厚生労働省の見解については、2018年3月にまとめられた「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書」の中で、「DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)とは、心停止又は呼吸停止に陥った患者に対して蘇生の処置を試みないよう記載した医師の指示書」と記載されているとおりだ、とのことです。

私は(このまとめの筆者)、原文を探して、この文章の中で引用していますが、厚労省の担当者は、交渉の中では、定義部分を読み上げました。

原文では、この定義に続けて、「(『生命倫理百科事典』(2007.丸善出版)」と記載されています。結局、この『生命倫理百科事典』の定義を引っ張ってきたものだ、ということです。

私は、この報告書について、交渉の中で、何度も読んだようなことを話しましたが、これは誤りでした。この報告書は、2017年8月から2018年3月まで行われた‘人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会’が作ったものです。この報告書そのものを、私は読んでいませんでした。私が読んでいたのは、この検討会の審議も経て2018年3月に作られた「人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン」のほうでした。

こちらから、川崎市のようにDNARを「延命処置・人工呼吸器装着希望の有無」と拡大解釈して使うことについて、厚労省としてどう考えるのか、問いました。

厚労省は、「このDNARは、もともとアメリカ医学会のガイドラインとして出されたもので、法律ではない。その前提で、日本集中治療医学会において、2017年の委員会報告の中で、『DNAR指示は、心停止時のみに有効であり、心肺蘇生以外の通常の医療、看護、ケアについては、別に議論すべきである。また、DNAR指示と終末期医療に関しては同義でない』ということは報告してありまして、我々としても承知しております」と述べました。厚労省としてDNARに言及したのは、上述の報告書のみだそうです。

厚労省として、川崎市などに修正を求めていくことを行うのかどうか、問いました。

厚労省からは「DNARは国で出したものではなくて、あくまでガイドライン上のことであり、我々が訂正する立場にない。また、尊厳死・安楽死について、まだ社会においても議論がなされている段階でありまして、まだ今後どうなっていくかわからない状況です。我々としては、注視しているのが現状です」との趣旨の答えでした。

しかし、このDNAR記載は、医師の指示でもなく、それぞれ入所している個人や家族の意見として書かれ、それをもとに、医療機関への入院も割り振られている現状があるわけです。この点を追及すると、「DNARという文言によるふるいわけではなく、処置の問題ですね」と言います。

このままで進むと危険なのではないか、という問いに対しては、「集中治療学会とか、日本救急医学会のほうで、終末期医療のガイドラインというものを出されていまして、学会でのガイドラインで対応してもらっている、という認識です。人生の最終段階において、本人の希望する生を全うするために、本人の意思を尊重した医療・ケアが必要であると考えています。それが必ずしも十分に普及されていない、という現状が今回のようなケースにつながっていると認識しておりますので、我々としましては、『人生の最終段階における医療・ケア 決定プロセスに関するガイドライン』というものを作成させていただいて本人の意思を尊重する観点から、本人が『人生の最終段階』で希望する医療・ケアを前もって考えていただくと、ご家族・友人・医療者も含めて、考えて行く。繰り返しそれを行って、共有していただく。advanced care planningという概念がありますが、そういうものの普及・啓発に努めていく所存です」と、言います。

救命されれば、「人生の最終段階」などにはならないのですが、死ぬことを前提とした答弁になってしまっているのです。そして、あくまで、厚労省のガイドラインを普及させるための人材育成や体制を作って行くとの答えに終始しました。

こちらから、「コロナウイルスに感染した場合、突如命の問題に直面するわけです。そういう時に、医療側からいのちの選別を迫られたときに、あくまでも救命を求めることができるのだ、という厚労省の見解をホームページなどで、明記してほしい」との趣旨の発言がありました。これに対して厚労省は、「集中治療医学会や救急医学会のガイドラインには示されています。今回のように、治療が行われないケースがあるということについては、やはりまだまだ普及が足りていないということだと思います。高齢者だけではなく、全世代に普及を行っています。自治体や救急のほうにも普及を進めています」との趣旨の回答でした。そして、普及を進めている文章はやはり、「人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン」であり、「人生の最終段階における医療・ケア体制整備事業」だとのことです。どちらも厚労省のホームページで読むことができます。

しかし、それは、大フォーラム側の求めていたこととは、まったく違うものなのです。

ここで障害当事者体験から、厚労省の普及しようとすることがいのちを切り捨てる方向に進んでいるという指摘を、介助者の方の証言とともに、語られました。「私はこの春、ある大学病院に入院したのですが、その看護師さんに何回も聞かれました。聞かれたのは、当事者本人ではなく、介助者に対して聞かれました。『〇〇さんは、延命治療を希望されていますか』と。介助者はもちろん、希望しています、と答えました。しかし、なかなか信じてもらえず、『紙に書いたものはないのか』と言われて、救急隊に見せる情報提供シートをいつも用意しているので、そのコピーを見せて、このとおり延命治療を希望しています、と。そして、ようやくわかってもらえました。病院の側は、延命治療をしない、と言ってほしいのではないか、と思ったぐらいでした。だから、これまでに普及してきたことを見直して行かないといけないのではないですか。」

厚労省は、「ガイドラインのケアのありかたなんですが、医療関係者との話し合いを通じて、本人の意思を尊重することなんです」との答えがありましたが、これでは、障害者本人に起こった事態を説明することはできません。

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●私たちの仲間の入院体験について

6月11日に、いつ、どのような病気での入院だったのか、ご本人に伺いました。

この3月に右足の蜂窩織炎にかかりました。この診断がつく以前に、救急車で病院に行くことになりました。救急の場合は、大森日赤に行かれているそうですが、この時は、大森日赤がクラスターを起こしていて、外来受診を断っていました。そこで、東邦医大病院に行くことになったそうです。

東邦医大病院では、とりあえず、診断した上で、ICUに入れることになったそうです。一般病床の空き具合を、この後で調べるまでの措置だったようです。この際に、看護師から「延命治療を希望しますか」と、介助者に質問があったわけです。

ところが、当事者自身には、このようなことが質問されていなかったそうです。介助者が本人と病院側のコミュニケーションサポートを申し出ていたそうですが、病院側はこれを無視していたようです。

らに、障害当事者の入院について、介助者をつけるように交渉をしたそうです。病院側が拒否するので、大田区の担当の公務員の人も呼んで交渉しました。

病院側は結局、「入院する必要はないので、帰っていい」ということになりました。

蜂窩織炎という病気については、確かに、入院する必要はないかと思います。それにしてもこの病気で「延命治療」がどうのこうのと言い出すとは、なんとも不思議な感じがします。おそらく、ICUに入る患者には、誰に対しても質問しているのではないか、と思われます。

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また別の仲間からは、家族の入院の際に延命治療をするかどうか聞かれたり、延命治療を希望しないということでようやく入院できたなどの事例を示し、「これは、医療体制の問題であり、医療体制は、国の責任で充実を図らなければならないのではないですか」との質問がありました。このような状況をどうするのか、と再三追及したところ、厚労省は、事務所内での打ち合わせに入ってしまいます。その上での回答は、「コロナ本部で判りますでしょうか」と言った上で、「延命治療を希望したのに、そのための医療機関に運ばれなかったとしたら、それは、ガイドラインの普及が不十分ということで、われわれとしては普及に努める、ということで対応して行きたい。物品などがなくて、運べない場合については、私たちは答えをもっていないので、コロナ本部のほうで対応していただきたい」との趣旨の発言がありました。

「人生の最終段階」のことに結びつけようとする医政局の話を聞いていると、どうしても、次のことを思い出します。

2004年当時の医政局長は、日本尊厳死協会も加わる‘死の権利協会世界連合’の総会で、基調講演の一つを行い、のちに、日本尊厳死協会の理事長となり、今に至っています。

この間に、施設の利用者や精神科病院内の患者にDNARを確認するのは差別ではないか、という疑問について、障害福祉課や精神保健課に見解を求めてみました。なかなか答えが返ってこないため、細則をしたところ、障害福祉課と精神保健課から、答えを持ち合わせていない、との趣旨の発言のみが、きました。大フォーラム側から、「厚労省は、いのちにかかわる差別を容認している、ということでよろしいですか。老健局も同じですよ」との発言がありました。これに対して、老健局が「高齢者も障害者も、必要な医療が提供されることが大事と考えています。コロナにかかった方は原則入院、ということで考えております。医療提供体制についての考え方は、コロナ本部の医療班からお答えさせていただければ、と思います」との発言がありました。

コロナ本部からは、だいぶ時間がたって、医療体制班が答えました。

「高齢者、障害者、基礎疾患をお持ちの方は、コロナに感染した場合には、重症化しやすいとこちらも考えていますので、また、特別な配慮が必要な方に対しての医療提供体制の確保ということについては、もちろん、人的資源ですとか、様々手厚く確保して行かなければならないことも承知しています。いただいていた質問の中で、医療崩壊の原因はどこにあるのか、ということがありました。国として、何をもって医療崩壊というのか、明確な定義を示しているわけではなくてですね、海外と比較したときの医療資源であったり、医療提供体制についての考え方も異なっていたりしますので、何をもって、こうなったから医療崩壊が起こっている、ということを一概に言うのは難しい。その中でも近日関西圏などで医療提供体制が厳しい状態になっているということについては、こちらとしても認識しているところでございます。」との趣旨の発言でした。

そして、すでに3月24日に提出している医療体制の強化の通知のことなどを語り、現在、都道府県に「病床確保計画」の見直しをしてもらい、医療体制の確保を進めていると言います。そして、入院が困難で、宿泊料用や自宅療養をしなければならない人に対しても、往診とか健康観察ができるように、都道府県に検討してもらっていると言います。厚労省としても、医療提供体制の確保に努める、とのことでした。

 海外と比較した場合の日本の特性としては、病床数としては多いが、コロナ患者を受け入れていただいている病院数の確保が進まないところ、コロナの入院患者の受け皿が厳しいというところにつながっていると思う、とのことでした。「コロナの患者さんの受け入れをお願いします、と言ったところで、病院のほうも、一般診療をしているということもあり、コロナの患者さんを受け入れるための施設や設備が必要になってきますので、そういったところにも支援を行って、患者を受け入れていただくことを検討してもらうという形で病床を確保していきたい」とも言われます。しかし、外国においても、一般診療をしていることに変わりはないわけで、答えになっていないことは明白です。

 病床計画や医学部定員については、医政局が答えました。

「病床を減らすというのは、地域医療構想のことかと思いますが、まずは現在のコロナ感染に対応する体制を取ることが急務だと思っています。地域医療構想については、長期的なスパンでみていくものになっていまして、人口構造の変化に対応して医療需要を考えたものです。人口構造の変化は、基本的に同じ形で進むと考えていて、その中で質と効率性を高める医療体制を進めるべきであると考えています。コロナ下の中でも、将来の医療需要を見据えて、地域医療構想を進めていただいている所につきましては、支援のご要望もいただいていますので、支援して行こうと考えております。医学部定員削減についても、中長期的な視点で考える必要があります。医師が一人育つためには、8年から10年以上かかりますので、今から予想されるのが2029年ごろには、OECDなど海外と比べても、人口1000人あたりの医師の数が諸外国と比べて平均値となるという試算を出しています。ですので、それ以降になりますと、供給と需要のバランスを考えながら、見ていかなければならないとのご意見がありますので、そうした需給の検討の場で、推計等も議論しながら、考えているとの状況です」との趣旨の答えでした。

まずは医師をOECDなみに増やして、医師の残業時間をなくし、若い年齢層の医療従事者を増やし、それから医学部定員のことを考えても良いはずなのですが。感染症を専門とする学者からは、4年か5年に1度、世界的な感染症が発生する可能性のあることが指摘されています。

●ヘルパーへの感染防止の保障措置とワクチンなど

障害保健福祉部障害福祉課 訪問サービス係員からの回答がありました。

「厚労省としては、コロナウイルス感染した障害者につきまして、充分な感染防止対策を前提として、必要なサービスが継続的に提供されることが重要であると考えておりまして、都道府県、相談支援事業所、障害福祉サービス事業所等が取るべき取り組みについて、令和3年2月16日付の事務連絡をお示ししています。また、障害福祉サービス事業所の職員の感染症対応力の向上を目的としまして、必要な感染症の知識や対応方針等をまとめました『新型コロナウイルス感染症 障害者福祉サービス施設事業所職員のための感染症対策マニュアル』と言ったものを作成しておりまして、都道府県や当事者団体等を通じまして、事業所の皆様方に周知を行ったところです。このマニュアルですけれども、入所系、通所系、訪問系、それぞれのサービス種類ごとに、標準の予防策だったり、通常業務の注意事項、職員や利用者に感染者が発生した場合の対応を、判りやすく説明しています。厚労省のホームページでも公開しているものです。これらを通じて、新型コロナウイルス感染症の流行下におきましても、必要な訪問系サービスを、引き続き安心して受けられるように取り組んでいきます。」。そして、ワクチンの優先接種の問題については、健康局にふりました。

健康局健康化予防接種対策室が回答しました。

「ワクチンの接種につきましては、医療従事者の皆様に接種していただいた上で、65歳以上の高齢者の方、その次に基礎疾患を有する方など、また、高齢者支援施設や訪問サービスなどに従事している方について、順々にワクチン接種をしていただくよう、政府の分科会で検討しまして方針を示しています。ただこうした形で順序を各自治体にお示ししていますが、必ずしも高齢者の方が完了してからでないと、ヘルパーの方ですとかに投与できないということではなくて、そこは地方自治体の動向に合わせまして、予防接種の進行に応じて、各自治体でご判断いただいて、優先接種を決めていただくことも可能であるとお伝えしているところです。そうした判断を踏まえて、ヘルパーの方などへのワクチン接種については、自治体が進めていただく形になります。」

5月30日に政府は、自治体の判断で、高齢者の接種が終わっていなくても、一般の64歳以下の接種をすることも可能であるとの方針を出しました。これとの関係がどうなるのかについても聞いてみました。

「基本的には、高齢者の方の接種の目途がたってから、基礎疾患を持つ方ですとか、ヘルパーの方とか、64歳以下の方も、ワクチンの接種をしていただくということになりますので、高齢者の方が完了する前から基礎疾患を持つ方が接種をするということはあり得ます。自治体の判断で必要に応じて、ワクチン接種を行っていただくということにしています。」

防護具の保障について、その前からどうなるのか質問していたのですが、答えがなく、待っていました。「障害保健福祉部の答えがないので」ということで、老健局が答えました。

「普段の感染対策に必要な物品などを購入するためのお金に関しては、平時では、令和3年度に見直した報酬改定で、感染対策の経費を報酬に上乗せするようにしています。さらに、実際にコロナウイルス感染が発生して、その方に対応すると言う段階になりましたら、地域医療・介護総合確保基金のほうから、かかる費用を支援する形になっています。国と都道府県がお金を出し合って作っている基金です。この実施主体は都道府県になっていまして、対応の早さなどは、正直言ってまちまちのところがあります。介護施設の許可権者である都道府県ー政令市、中核市、市町村などありますが福祉施設の運営が十全に行えるようにサポートすることになっています」

●最後に

大フォーラム側から今日、課題になった点についての厚労省の方の認識を聞きたい、との発言がありました。

これに、老健局の佐野氏が対応しました。

「本当は、老健局が答えるべきではないと思うのですが、本日いただいた中で、国として状況を把握すべきとのご意見をいただきました。コロナ本部が宿題として持ち帰った分がいくつかあると思いますが、この辺り、コロナ本部で検討して、対応していくことになるかと思います。また、引き続き、このような現場のご意見というのは、我々としても非常にありがたいと思います。この霞が関にいると、ご意見や実態が判らないこともあるので、こうした形で現場で起こっていることを、我々のほうに伝えていただけると、ありがたいと思います。」

 こちら側から今後とも、意見交換していくことで良いですね、と確認し、交渉を終わりました。

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