小池都知事は東京五輪「人権」条例案を撤回しろ! 集会・デモ、インターネットなど 「表現の自由」圧殺をやめろ!

表現の自由は民衆、とりわけ少数者にとって極めて大切な権利です。専制を打倒したフランス「ひとと市民の人権宣言」は表現の自由を高らかに謳いました。しかし今、職場で自由に話せるでしょうか? 工場や職場の扉の前で民主主義は立ち止まり、企業の専制が支配しています。マスコミやインターネットも大企業が支配し、国会も安倍独裁が占拠しています。こうした中で、広場・公園、集会場は、政府に対する批判や国家による弾圧に抗する民衆運動の出発点・拠点となってきました。最近では独裁を民衆の力で倒したアラブの春がその典型です。
今、秘密保護法や戦争法、警察盗聴の拡大、話し合っただけで罪になる共謀罪など治安管理国家化、監視社会化を一気に進めてきた安倍政権の下で、人々が結びあう場を更に管理し抑圧する規制が強まっています。東京都が都議会に提出した「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例案」(東京五輪「人権」条例)でも、「ヘイト対策」を口実にした「公共施設使用規制」が提案されています。
しかし、条例制定の理由とされている五輪成功やヘイト根絶は「口実」に過ぎません。そもそも巨額の税金を使って東京五輪を開く必要などありませんが、条例制定で狙っているのは、東京中心部で反対集会・デモを開かせず(リオ五輪では大規模な反対運動)「世界一安全な国 日本」を誇ることです。既に国立競技場周辺を地域戒厳状態にすることが計画されています。この治安管理エスカレートは五輪以降も解除されず、続くこと必至です。

■東京五輪「人権」条例批判① 都知事が、とんでもない人権抑圧条例を議会に上程!
東京五輪「人権」条例は、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動のうち解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイト解消法、2016年)第4条2を受けた都の施策だとしています。しかし同法は、基本的施策として相談体制の整備(第5条)教育の充実等(第6条)啓発活動等(第7条)を謳っていますが、条例にも都「人権施策推進指針」にも、そのような総合的なヘイト根絶に向けた施策はありません。あるのはヘイト規制を口実にして、様々な表現活動を公の施設やネットから締めだけことだけです。
条例はヘイト「解消」を謳ってはいます。しかしヘイト「禁止」を理念として掲げていません。これは言葉づかいの問題ではなく、基本姿勢の問題です。なぜか? 自衛隊を前に「三国人」暴言を吐いた石原都知事が典型ですが、東京都政は朝鮮人学校無償化打ち切りなど差別行政を続けています。小池都知事も関東大震災朝鮮人虐殺慰霊式への追悼文を2年連続で取りやめました。彼らが在特会などのヘイト「解消」を唱えるのは、その言動が「行き過ぎ」(橋下元大阪市長)で「国の品位を汚す」(安倍)からに過ぎず、差別・迫害され傷つく当事者の視点、少数者の視点でヘイトを根絶する志向は全くありません。

■東京五輪「人権」条例批判② 差別主義者・小池都知事の策略
小池都知事が差別・排外主義をまったく反省していないことは、条例の骨格を見れば明らかです。あまたの差別の中で、なぜLGBT差別とヘイトだけを取り上げるのでしょうか? 都は2015年「東京都人権施策推進指針」で「人権課題」として「女性/子供/高齢者/障害者/同和問題/アイヌの人々/外国人/HIV感染者/ハンセン病患者等/犯罪被害者やその家族/インターネットによる人権侵害/北朝鮮による拉致問題/災害に伴う人権問題/ハラスメント/性同一性障害/性的志向/路上生活者/様々な人権課題」を掲げました。
そして、「オリンピック憲章」2017は、「オリンピズムの根本原則」として「6. このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」としています。今回の条例案でも、第1章でその旨を謳っています。
しかし、条例案の具体的内容は、「多様な性の理解の推進」(第2章)「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」(第3章)に意図的に切り縮められています。これは「人権施策推進指針」17課題のうち2~3課題に過ぎず、「オリンピズムの根本原則」のうち「言語、宗教、政治的またはその他の意見…財産、出自やその他の身分」差別禁止が抜け落ちています。その選択基準は全く明らかにされていません。五輪を口実に「路上生活者」の強制排除も強まっています。また「性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取
扱いの禁止」(第4条)の中身も啓発等の推進を図るための基本計画策定に過ぎず、差別禁止の具体的施策は明らかにされていません。

■東京五輪「人権」条例批判③ ヘイト解消を口実に、集会・デモ禁圧を狙う違憲条例
条例の具体的なヘイト解消施策は「公の施設の利用制限」(11条)「拡散防止措置及び公表」(12条以下)です。しかし、この制限・措置には憲法によって保障された表現の自由にかかわる大きな問題が孕まれています。
ヘイト解消法は「本邦外出身者」規定など様々な問題をはらんだ理念法ですが、そこに会館使用規制による集会・デモ規制、ネット規制など表現規制が定められているわけではありません。ヘイト規制を実効力のあるものにするための議論は様々ありえますが、小池都政は一足飛びに行政権力による表現規制に走りました。ここには小池都政・警察の本来の意図が露呈しています。
第11条は「不当な差別的言動」を防止するための「公の施設の利用制限」についての「基準」を「知事」が定めるとし、その内容が知事と審査会(知事の「付属機関」―パリ原則の第3者機関ではない)に白紙委任されています。すべての集会、会合、あるいはイベント・展示会、マスコミなどの表現活動が対象になります。
「不当な差別的言動が行われることを防止するため」と目的らしきものは謳っていますが、このままでは地方自治法第244条2項(正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない)に反します。
また目的によって手段の正当性が直ちに保障されるわけではありません。最高裁は、これまで施設貸出許可・不許可について「明白かつ現実的危険」基準で合憲性を判断してきましたが、「行われることを防止するため」では、この基準をクリアできるとは思えません。条例で白地「人権抑圧法」を創ることなど許されません。
集会・デモを規制する悪名高い東京都公安条例は“許可制だが実質は届け出制”だと最高裁が合憲的解釈をして今も不当なデモ規制が続いています。しかし条例はこの解釈すら超えて、許可制の会館使用規制で、実質的に、集会・デモをできなくさせるものです。
集会場なしに集会の自由は行使できません!公園管理者が集会を解散させるか、無届集会だとして警察が弾圧するか、いずれにしろ戦前の警察官の集会臨検やマイク使用の弁士中止・解散すら彷彿させる異様な規定です。

■東京五輪「人権」条例批判④ インターネットの法規制を狙う
第12条は、「表現活動」(集団行進、デモ、インターネットによる方法その他手段により行う表現行為)が「不当な差別的言動に該当する」ときは「都の区域外で行われた表現活動」も「概要等」を公表する拡散防止・公表の対象になるとしています。インターネット「その他手段」とは何か?「概要等」とは何か?「拡散防止ではない概要等公表」の方法は?など不明です。あまりにも杜撰で、人権尊重の姿勢は全く見えません。
そもそもネット規制による拡散防止策には既に実効性に疑問が付けられています。条例に似た拡散防止策で効果をあげられなかった吉村大阪市長は、8月28日、法務省と総務省を訪れ、インターネット上のヘイトスピーチについて、サイトの運営者に投稿者の氏名や住所などの開示・保存を義務づけるための法改正を要望しました。国レベルでのブロッキング(接続遮断)などネット規制の強まりと東京都・大阪市の動きは連動し、法改悪に向かっていることは警戒する必要があります。

■デモ・集会くらい自由にやらせろ!
条例はヘイト解消を口実に憲法が保障する集会・デモなど表現の自由を消滅させようとしています。「不当な差別的言動」と知事が判断すれば、反戦運動・労働運動・市民運動・マスコミなども対象になり得ます。しかしヘイト解消とデモ・集会規制とは全く別の問題です。国家権力は既にヘイトクライム(憎悪犯罪)取締りに充分な法的武器を持っています。今はすべてを使わないだけです。差別体質にまみれた政治家・行政とつるみ、警察に庇護されたヘイト集団は狡猾に規制の網の目をくぐり、新たな治安法を誘発する役割を果たしているのです。

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例(抜粋)
第169号議案 2018年9月19日 東京都知事 小池百合子
第1章 オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現
第2章 多様な性の理解の促進
第4条 都、都民及び事業者は、性辞任及び性的志向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。⇒第5条 都は、啓発等の推進を図るため基本計画を定める。
第3章 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
都は「ヘイトスピーチ解消法」第4条2項に基づき、都の実情に応じた施策を講ずることにより、不当な差別的言動(同法第2条)の解消を図るものとする。
第9条(定義)1 公の施設 都条例で設置する施設
2 表現活動 集団行進及び手段示威運動並びにインターネットによる方法その他手段により行う表現行為
第11条(公の施設の利用制限) 知事は、公の施設において不当な差別的言動が行われることを防止するため、公の施設の利用制限について基準を定めるものとする。
第12条(拡散防止処置及び公表)知事は、次に掲げる表現活動が不当な差別的言動に該当すると認めるときは、事案の内容に即して当該表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずるとともに、当該表現活動の概要等を公表するものとする。
4 第1項の規定による公表は、インターネットを利用する方法その他知事が認める方法により行うものとする。
第13条以下 審査会の意見聴取、設置、組織、審議手続、委任

条例案全文は以下からダウンロード
東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例

■日本国憲法
第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

■ヘイトスピーチ解消法 
第2条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。

■地方自治法
第10章 公の施設 第244条 2 普通地方公共団体…は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。 第244条の2 普通地方公共団体は…公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。

■世界人権宣言 
第19条 すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。
第20条 1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
第29条 2 すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として、法律によって定められた制限にのみ服する。
第30条 この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。

小池都政や安倍政権の狙いをよく見すえる必要があります。第2次安倍政権誕生以降、秘密法・戦争法・改悪盗聴法・共謀罪など表現の自由などを規制する違憲立法が続いてきました。各区も、条例によってではなく「内規」によって集会規制を強めてきました。新宿区が柏木公園をデモ出発地として使わせないことを、議会にすら諮らず部長決済で決め、大量の抗議・批判の声に耳を傾けないことがその典型です。刑事・民事・行政規制によって表現の自由総体を消し去ることが目論まれているのです。それは自民党改憲草案に盛られた表現の自由規制と軌を一にした攻撃であり、緊急事態権限新設などの改憲策動あるいは新治安法と結びついています。

■表現の自由圧殺を許さず、反対の声を広げよう
戦後日本で表現の自由は保障されてきたとされます。確かに戦前に比べればそうです。しかし労働者民衆にとって、その保障は「天上界」のことに過ぎません。デモや集会として、弾圧の中でかろうじて勝ちとってきたのです。そして今、集会の自由の前提となる公園・会館使用の自由が剥奪されようとしています。既に渋谷区ではデモ出発地として使える公園はなく、都条例によって、日比谷公園や亀戸中央公園、あるいは東京芸術劇場などの使用が制限される可能性もあります。都条例が創られれば各区はもとより全国に波及します。集会を開けない集会の自由とは何か! 表現の自由は建前として認めるが、表現させなければいい! 理不尽ではないですか?
私たちはヘイトスピーチ、とりわけヘイトクライムに絶対に反対であり、在日韓国・朝鮮人、中国人そしてあ
らゆる移住労働者とともに反撃します。また、在特会などの極右が支配者・警察の先兵になって、全日建運輸連帯労組関西生コン支部や反天皇制運動、沖縄反基地闘争などに対する暴力的襲撃を繰り返し、労働運動・民衆運動の圧殺を目論んでいることに共同反撃します。
労働運動・民衆運動は、表現・団結・繋がりが命であり、私たちは存亡をかけて東京都条例とヘイト集団に対決します。共に条例制定を阻止しましょう。                        〔文責S〕

〇集会くらい自由にやらせろ デモくらい自由にやらせろ 警察は集会規制をやめろ デモ弾圧をやめろ
東京都は公安条例を廃止しろ 表現の自由を絞殺するな
〇東京都五輪条例反対 五輪にかこつけた治安管理強化反対 ヘイト規制を口実にするな 
小池・吉住らは恥を知れ 差別排外主義反対 生きる権利に国境はない 
ヘイトクライム糾弾 LGBT差別糾弾 排除社会を許さないぞ
〇新宿区(渋谷区・千代田区・中央区・豊島区・足立区)を糾弾するぞ 公園は行政の私有物ではない 
公園・会館を自由に使わせろ 野宿者排除を許すな
〇東京五輪反対 ナショナリズムを煽るな 地域戒厳態勢を許すな
〇改憲阻止 表現・集会・結社の自由を侵害するな
戦争と治安弾圧の流れに抗し、管理・監視の息苦しい社会に風穴を開けよう!

都議会情宣・抗議 

■9月27日(木)8~11時、都庁第1庁舎前情宣 

■9月29日(土)新宿地域デモ:15時、新宿東口アルタ前集合 

反対集会 17:00~ 日本基督教会館4階(西早稲田2-3-18 / 東西線早稲田より徒歩6分)〇講演:鵜飼 哲一橋大名誉教授 ・連帯発言 他

■10月2日(火)都議会総務委員会傍聴

■10月5日(金)都議会閉会 12~13時 都庁第1庁舎前情宣

*9月13日新宿区交渉で「中央公園から防衛省へのデモは無理、新宿警察よりもっと上とも相談」と発言。

集会・デモくらい自由にやらせろ!実行委員会
呼びかけ:破防法・組対法に反対する共同行動、差別排外主義に反対する連絡会、地域共闘交流会
(TEL.FAX 03-5577-6705、争議団連絡会議気付)

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