国会議員の皆様へ
旧優生保護法被害者に対して、国の責任を明らかにし、 同法のもたらした事態に対する検証を求めます。
2019 年 1 月
「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会
私たちは、障害者権利条約(以下、権利条約)の具現化のため、2011年8月にしょうがいし ゃの代表も関わって作られた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」の完全実現 を求めて行動しています。
権利条約においては、その第二十三条において、しょうがいしゃが生殖能力を保持し、結婚し、 家族を作る権利を有することを規定しています。優生保護法は、1948年、日本国憲法下で作ら れ、1996年に廃止されました。権利条約が国連で採択される10年前のことでした。しかし、 この1996年の廃止の時にも、日本が権利条約を採択した2014年の時点においても、優生保 護法による被害を受けた人々を、国が顧みることはありませんでした。
私たちは、こうした被害者への国による謝罪、賠償を行うとともに、なぜ優生保護法を国会議員 の全員一致で可決してしまったのか、被害者はどのような人生を送ってきたのかなどの検証が不可 欠であると考えます。これらを実現する中で、権利条約の立場に、国が実際に立つことができるの です。
昨年12月10日、旧優生保護法による被害者への謝罪と一時金支給の問題に取り組んでいる与 党ワーキングチームと超党派国会議員連盟は、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対 する一時金の支給等に関する立法措置について(基本方針案)」をまとめ、今国会でこれに基づく法 律の成立を目指していると報じられています。
全国での被害者の提訴を受けたものとはいえ、こうした取り組みが行われることは、大きな前進 です。関係する議員の皆さんに、敬意を表します。しかし、この「基本方針案」の内容だけでは、
「過去の出来事にけりをつける」といったことに終わってしまわないのか、との懸念を抱くもので す。
そこで、以下の内容を、法案に盛り込んでいただくよう要請します。
優生保護法の成立とそれによってもたらされた被害について、検証を行うことを、盛り込んでく ださい。
「基本方針案」には、「国としてこの問題に今後誠実に対応していく立場にあることを深く自覚」 するとあります。そうであるならば、被害者への一時金の支給にとどまらず、国としての検証を行 うべきではないでしょうか。
ハンセン病政策において国が犯した過ちについては、2001年6月に、当時の坂口厚生労働大 臣が国会で検証を約束し、2005年3月に、1500ページを超える『ハンセン病問題に関する 検証会議 最終報告書』が作成され、さらに、「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく 再発防止検討会」が現在に至るまで検証を深めています。こうした前例も踏まえれば、優生保護法 問題についても、検証を行うのは、当然でしょう。
検証の観点としては、次のようなことが重要です。
(1) 幸福追求権(第十三条)、生存権(第二十五条)、残虐な刑罰の禁止(第三十六条)などの 人権規定を有する憲法下で、なぜ、国会議員の全会一致で、優生保護法が成立してしまっ たのか。
(2) 優生保護法に規定する不妊手術にとどまらず、放射線の照射、睾丸や子宮の摘出まで行わ れてきました。このような健康に重大な被害を与える行為を、厚生省が認め続けたのは、 なぜか。
(3) こうした被害者がどのような人生を送ってきたか。
(4) 優生保護法廃止以後もしょうがいしゃには不妊手術や妊娠中絶が事実上強要されている 実態があります。こうした実態の調査とこれに対する国の姿勢を明確にすること。
優生保護法が憲法違反の内容であったことを明確にしてください。
国権の最高機関である国会が、優生保護法の違憲性を明らかにすべきです。報道によれば、国賠 訴訟に影響させないために、憲法判断を行わない、などと言われています。しかし、優生保護法は、 国会が成立させたものであり、憲法との関係を明確にさせる責任は国会にあります。そうでなけれ ば、謝罪も真摯なものとはなりえないでしょう。
ほかの問題では、憲法論議を活性化させよう、という国会議員の方々はいらっしゃいます。なの にどうして、法律や政策による人権侵害に関しては、憲法の人権条項との関係について、議論しよ うとされないのか理解できません。
謝罪の主体を、国、としてください
謝罪を含む法案を採決するのは、国会議員の皆さんです。そこでは、国の責任を明確にすべきで す。そうしてこそはじめて、真摯な謝罪となるはずです。
優生目的で行われた人工妊娠中絶被害者も、この法案の対象としてください
旧優生保護法では、優生目的での人工妊娠中絶の実施が規定されています。本人の同意が建前と して規定されていますが、例外規定もありました。周囲からの圧力の中で、同意させられた実態も 多かったことでしょう。
何よりも、同意があったとしても、「障害や疾病の有無によって分け隔てられ」た結果であり、 優生政策による被害者であることは明らかです。
報道機関の協力を得て、周知の徹底を
「基本方針案」では、「一時金の支給に関する制度の周知」の方策の例が示されています。
現代において、周知を徹底させるためには、報道機関に協力の要請をおこなうことが不可欠でし ょう。
被害者への賠償は急務です。それと同時に、同じ過ちを犯さないために、優生保護法の罪を検証 することが必要です。
私たちしょうがいしゃは、現代社会でますます優生思想が強まっていると感じています。出生前 診断や着床前診断の拡大、「尊厳死・安楽死」の推進、「脳死判定」など、「生きるにあたいするい のちとそうでないいのち」の選別が進んでいるからです。この風潮の中で、津久井やまゆり園事件 も起こってしまいました。
優生思想をなくしていくための国会議員の皆さんの努力を要請するものです。
【連絡先】
「骨格提言」の完全実現を求める 大フォーラム実行委員会事務局
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担当 横山、菅原
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