福生病院組合 管理者 加藤育男 様
公立福生病院 院長 松山 健 様
要 請 書
(1)昨年8月16日に、透析を中止して44歳の若さで亡くなられた女性の診療について、真実を明らかにしてください。
貴病院は、この問題をはじめ、透析の不開始・中止問題について、まともな記者会見を行っていません。3月28日に、貴病院の弁護士事務所で開かれた記者会見では、毎日新聞の記者を排除して行うと言う異常なものでした。
この女性(以下、Aさん)の夫に対して、カルテ開示を拒否した、と聞きます。これは、2003年9月12日に厚生労働省医政局長通知として出された「診療情報の提供等に関する指針」にも違反する行為です。
これらのことから、貴病院の対応は、真実を明らかにすることを拒んでいるとしか考えられません。
貴病院の4月11日付の声明で、「当院では、報道で取り上げられた44歳女性の患者のケースを含め、医師が積極的に透析の見合わせの選択肢を示したことはございません。」と記載しています。これは、3月28日の記者会見から貴病院側が主張し始めたことですが、全く理解できません。
患者は、苦しみなく生きることを求めて病院に行きます。Aさんが昨年8月9日と10日にわたって、シャントの形成のために貴病院を訪れながら、透析中止を選択したとなると、そこには、医療者側からの中止の意思を引き出す対応があったとしか考えられません。
貴病院の同じ声明の中で、「透析の再開を望む患者の意思に反して透析再開を行わなかった事実も一切ございません。」と記載していますが、昨年8月15日に、Aさんが透析の再開を求めたことは事実であり、Aさんの夫も知るところです。夫がAさんの透析再開の意思を証言しているのに、貴病院がこれを否定するのは、全く理解できません。
(2)透析を開始しないで死亡した20人、中止して死亡した4人について、病院側とどのようなやり取りがあったのかを明らかにしてください
透析を行うために来た患者の中で、これほど多くの人が死を選んだ、という話を聞いたことはありません。しかも、そのほとんどが同意書もないままに行われていたのです。
どのようなやり取りがあったのかを、報告書としてとりまとめ、恣意的な排除を行わずに、誰しもが質問できる機会を作ってください。
(3)死への誘導を止めてください
腎臓を患う患者にとって、透析治療が必要と診断された場合、ほとんどの患者が、人生に対する不安や絶望を感じてしまうでしょう。また、毎年送られてくる医療費の通知も重圧となります。医療スタッフは、そのような患者に対して透析を受けながらの人生に希望が持てるように、励まし、支えて治療に当たることこそが求められます。
貴病院の腎臓病総合医療センターの外科医は、透析をしている人は「終末期」だ、との見解を述べていますが、このような姿勢で患者に対応するならば、死に誘導する危険性は、非常に大きいと言えます。
Aさんの夫の手記によればAさんは、「1999年ごろに抑うつ性神経症と診断され、治療を続けていました。その頃から精神的に不安定で、過去20年間で薬を大量に摂取し、自殺未遂を3回しています。」と記されており、死を選択するような提起をすること自体が許されません。
亡くなる前日に「こんなに苦しいのであれば、透析をまたしようかな」と言うAさんに対して、この外科医は、「苦しいのが取れればいいの?」と聞き返し、「苦しいのが取れればいい」と言うAさんに鎮静剤を注入したと報じられています(3月7日付毎日新聞)。これは、明らかに死に向かって誘導しているのです。殺人行為です。
(4)意思の選別は許されません
この外科医は、昨年8月9日に示されたAさんの意思を「正気な時の意思」とし、15日の透析再開を求めた意思を「正気でないときの意思」と切り捨てました。このような意思の選別は、絶対に許されません。
このような選別がまかり通れば、重篤な患者の意思はもちろん、認知症、精神障害、知的障害とされた人たちの意思も無視されることになります。
このような人物が「透析治療を受けない権利を患者に認めるべきだ」と主張することについて、強い嫌悪感をもって糾弾します。自らの思考に合致する方向を権利とし、そうでない意思は無視して構わないとするこの態度を、断じて容認できません。
(5)患者のいのちを軽視した「尊厳死・安楽死」の推進を止めてください
貴病院の松山院長は、Aさんのケースも含めて、同病院で行われている透析の中止や不開始で死なせることを、適正で倫理的だ、と述べます。そして、人工呼吸器や胃ろう、透析を挙げて医療費の観点も指摘しつつ「どういう状況下でも命を永らえることが倫理的に正しいのかを考えるきっかけにしてほしい」と語っています(3月10日付毎日新聞)。
そして、4月12日付デイリー新潮では、小説『高瀬舟』で、実の弟を絶命させた兄の立場で「尊厳死」を考えるべきだ、と主張しています。「尊厳死」推進の実践者となれ、と言いたいのでしょう。
医療法の第一条の二では、「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし」て行われなければならないことを規定しています。患者の生命の尊重を忘れた医師たちは、その職業から退場することを求めます。
2019年4月24日
地域でくらすための東京ネットワーク
代表 西 澤 光 治
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