病棟転換居住系施設を考える会 ニュース 第33号

第33号(2018 年5月10日)
生活をするのは普通の場所がいい
STOP! 精神科病棟転換型居住系施設!! NEWS

「病棟転換型居住系施設を考える会」の集会開催決定
2018年6月26日(火)13時~15時
会場:参議院会館講堂(通行証配布12時30分~)

当会は,2014年6月26日に「生活するのは普通の場所がいい STOP! 病棟転換型居住系施設!! 6.26緊急集会」を開催しました.作りすぎてしまった日本の精神科病床を「暮らしの場」にしようという馬鹿げた政策にSTOP! をかける緊急行動でした.それから4年が経過しましたが,いまだ日本の精神医療は,閉鎖的処遇であり,隔離拘束・長期入院が多数を占め,何ら変革されないままです.退院できる人とできない人を選別する仕組みまで考えられています.一方,多くの人が日本の精神医療を抜本的に変革しなくてはならないと考え,行動しています.当会では改めて私たちを取り巻く状況を確認しつつ,精神医療改革に向けて,当事者・家族・精神医療や地域精神保健・福祉の関係者がつながりながら歩むために,集会を開催します.
プログラム(予定)
13時 基調報告 「考える会」の取り組み,山積する課題の確認
13時15分~  変革すべき精神医療 見えないものを見る努力
〇 平成29年度みんなねっと全国調査報告
重度かつ慢性でも地域生活している事実 入院者の7割が隔離室を経験  〇 地域精神保健福祉機構・コンボ 身体拘束に関するアンケート調査報告
200人が答えたインターネットによる調査
〇 精神科病院に勤務する看護師の語る医療現場の現状
14時~
〇 私の経験した精神科病院での身体拘束
〇 ベルギ―で実現した精神医療改革
14時30分~ 休憩
14時45分~15時  2018年から精神保健福祉資料(630調査)が変わる! 何が問題なのか

2月8日に開催された拡大寄り合いは,参議院会館のB107会議室を会場に,東京や埼玉はもちろん,群馬,京都,大阪,兵庫などからもご参加いただきました.

最初の報告を行っていただいた佐々木信夫弁護士からは,日弁連が発表した精神保健福祉法改悪案に反対する声明について語っていただきました.
続いて,長谷川利夫代表から,重度かつ慢性・身体拘束・新たに動き出している病院敷地内グループホームの動きなどを,報告していただきました.原稿にもまとめていただきましたのでお読みください.
指定発言として,最初に,大阪精神医療人権センター事務局長の上坂さんから,日本精神科病院協会が作り,厚労省が予算も付けて推進している「アドボケーター」構想の批判を行ってもらいました.患者の権利擁護ではなく,「主体的に精神科医療を受けられるように側面的に支援する者」とその役割を規定し,知りえた患者の思いを入院させている病院側に伝えるという構想なのです.
全国精神保健福祉会連合会みんなネットの小幡さんからは,精神障害者の家族に対するアンケートの中で,「重度かつ慢性」の基準に当てはまる人たちが地域で多く暮らしている実態があることなどを,語っていただきました.
全国「精神病」者集団の山本真理さんからは,精神保健福祉法改悪案にもみられるように,医療や福祉が権力者の治安維持政策と一体化していく危険性について語られました.また,法的代理人=成年後見制度の危険性についても語られました.
精神障害者地域生活支援とうきょう会議事務局長の丹菊さんからは,精神保健福祉資料に基づき,精神科病院という入れ物が作られれば,そこを埋める入院患者が作られてしまう構造があることを指摘されました.また,そこで働くソーシャルワーカーが病院の経営のために,患者を集めるために奔走している実態への批判も語られました.
あみ(全国精神障害者地域生活支援協議会)の役員で,千葉で活動されている内山さんからは,千葉県の地方精神保健福祉審議会の会長も務める千葉大の伊豫さんが,病院敷地内グループホームの推進を県にも働きかけていることが報告されました.伊豫さんは,社会保障審議会の障害者部会でも同趣旨の発言をしています.
会場発言として最初に関口さんが発言されました.厚労省が今年度中に出すとされる現行法に基づく退院後支援ガイドライン,措置入院の運用に関するガイドラインに気を付けなければならないこと.また,診療報酬などの改定がもたらす影響への注意も呼びかけられました.単科の精神科病院に入院している人が他の科を受診できないという問題をも取り上げなければならないことも指摘されました.
古賀からは,呉秀三が『精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察』を1918年に著し,「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の他に,この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」との言葉を記してから100年の今年,NHKでも身体拘束や長期入院問題が取り上げられ,世の中の関心も高まっている状況があるので,アピールするための大きな集会などを行ってはどうか,との提案をさせていただきました.
兵庫県精神障碍者連絡会の高見さんからは,精神保健福祉法改悪案の参考とされた兵庫県方式(精神障害者継続支援体制構築事業)の実態が語られました.
大阪の谷口さんからは,ご自身が入院する中で知り合った「重度かつ慢性」とされる方の状況を語っていただきました.10年入院されている30歳代の方は,退院のための診察が近づくと緊張して調子を崩してしまいます.そうすると,医者は,さらに1年退院を延期することが続いているとのことです.
全国「精神病」者集団の桐原さんからは,京都で,国が示す「重度かつ慢性」とする患者数の計算にとらわれることなく,より良い医療計画や障害福祉計画が立てられていることが報告されました(発言要旨以下に掲載されています).
京都から参加された安原さんからは,「重度かつ慢性」の基準が日本の長期入院体制を守るために作られたものであることが指摘されました.また,成年後見制度などの基本的考え方である「本人の最善の利益」を第三者が判断することの危険性も指摘されました.
群馬県から参加された成田さんからは,病院敷地内に援護寮1棟と4ないし5棟のグループホームを設置している病院があり,ご自身もそこに行くことを勧められた経験をお話ししていただきました.
大阪自立生活夢宙センターの末延さんからは,寝屋川市で起こった私宅監置女性死亡事件に抗議する声明文を作られた思いを語っていただきました.

★精神保健福祉法改悪案について(桐原発言要旨)

第196回国会での精神保健福祉法の上程阻止に向けて
現行の精神保健福祉法体制において退院後支援は、すでに動き出しています。全国の都道府県及び政令指定都市計67カ所中、法改正以前から措置入院者退院後支援を実施している自治体が59カ所、実施していない自治体が8カ所あるとされています。また、明文化されたルール(ガイドライン)がある自治体が7自治体、明文化されたルールがない自治体が52自治体であり、退院後支援を実施しているほとんどの自治体に明文化されたルールがないことがわかります。それでこそ、事件が発生した相模原市には事件発生以前から「措置入院者に対する支援のあり方ガイドライン」という明文化されたルールがあります。退院後支援の何が問題であるのかは、抽象度の高い不安のようなことばかり言っていてもなかなか周囲に伝わっていかないと思います。なので、私たちの重大な懸念をより具体的なかたちで言語化し、問題の位相を特定化していく作業が必要となります。
2018年の通常国会は、1月22日に招集されました。今国会への精神保健福祉法改正法案提出阻止を唯一、実現可能にするための方法は、与野党による政策討論を戦略的に使うことで全体を通して国会審議の日程闘争に勝利することです。しかし、この間に野党は更なる分裂をうけて与野党による政策討論がより難しい状況になってしまいました。こうした状況に対して政策討論が可能となるように、まずは市民の手で野党を精神保健福祉法改正法案反対の一点で団結させていく必要があります。
ここからは、あくまで私の見立てに過ぎませんが、おそらく国会は2月末から3月中旬まで予算の集中審議がおこなわれると思います。政局を左右するような追及材料が多ければ多いほど長期化し、法案上程阻止の実現性が高くなります。そして、厚生労働委員会が開始される前後に自民党、公明党が法案の賛否を決める「法案審査」をおこないます。与党両党が合意して法案賛成の立場が固まった段階で上程されることになります。通常は、関係団体ヒアリングがもたれますが、既に廃案前の法案の際に法案審査で賛成を決めているので、この手続きは省略される可能性があります。その後、野党の法案審査となり、それぞれの政党が賛否を決めることになります。このスケジュール通りに与党の法案審査がおこなわれなかった場合は、今国会への法案提出は断念となります。そのため、1月末から2月頭にかけて与党に対する集中した議員周りが非常に重要となります。
他方でこのたびの通常国会では、働き方関連法案の上程がほぼ決まっています。働き方関連法案には、裁量労働の拡大が盛り込まれています。裁量労働は、労働者を死ぬほど働かせてしまうような危うさをもっています。今国会で厚生労働省は、働き方関連法案の成立に全力を注ぐものと思われます。逆に争点が多い割には政権にとってメリットがない精神保健福祉法は、後回しにされることが予測されます。政府・与党は、働き方関連法案を成立させるにために日程闘争に勝ち抜けるような審議の順番を要求すると思われるのでコメジルシ法案の直後、もっとも早く審議入りを果たすことになると思われます。
そのため、働き方関連法案の反対闘争を成功させ、審議が長引けば長引くほど、精神保健福祉法の審議は目処が立たなくなり、成立断念の可能性が高まることになります。我々は、精神保健福祉法改正案の成立阻止のためにも、労働者と連帯し、働き方関連法案の断固粉砕に向けて闘っていく必要があります。
※2018年2月の拡大会議の約一月後、精神保健福祉法は今国会への上程が事実上、見送られました。

●廃案以降の動き
昨年廃案となった精神保健福祉法改悪案に対しては,再上程させないための闘いが行われてきました.
(報告 古賀 典夫 田中 直樹)

病棟転換型居住系施設を考える会 声掛け人代表
池原穀和(弁護士),伊澤雄一(全国精神障害者地域生活支援協議会),上野秀樹(敦賀温泉病院),加藤真規子(こらーるたいとう),関口明彦(日本ピアサポート),高木俊介(たかぎクリニック),長谷川利夫(杏林大学),増田一世(日本障害者協議会),八尋光秀(弁護士),平野みどり(DPI日本会議),山本深雪(大阪精神医療人権センター,大阪精神障害者連絡会),渡邊乾(全国精神医療労働組合協議会)

この『NEWS』は,複写,転送,転載,大歓迎です.ご自由かつ積極的にご活用ください
≪連絡先≫長谷川利夫(杏林大学保健学部作業療法学科)
TEL.0422-47-8000  (内線2512)  〔携帯電話〕 090-4616-5521
http://blog.goo.ne.jp/tenkansisetu

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